イノベーションを対話する~起爆力は何か

・企業を評価する場合、イノベーションは1つの重要な軸である。事業の将来の成長力は、イノベーションの実行に依存する。イノベーションとは‘革新的な仕組み作り’で、狭い意味での技術革新にはとどまらない。企業価値を新たに創造するための画期的な仕組み作りのことを意味する。

・DTC(デロイトトーマツコンサルティング)は、METI(経済産業省)のプロジェクトとして、イノベーションマネジメントの実態調査を行った。昨年末に上場企業にアンケートを実施して、その分析結果を公表している。

・イノベーションを組織に根付かせる経営力は、どのように高めればよいか。そのためには、資本市場との対話に、イノベーションの軸を明示的に位置付ける必要があり、今回の分析フレームワークが役立つのではないか。このような問題意識で議論する機会があった。その中での論点について取り上げてみたい。

・日本企業のイノベーションへの取り組みについて、DTCでは7つの評価軸を挙げて、それぞれを点数化した。企業からのアンケート結果に基づいている。それらは、(1)トップマネジメントのリーダーシップ、(2)イノベーション戦略、(3)イノベーションプロセス、(4)パイプライン・ゲート管理、(5)外部コラボレーション、(6)組織・制度(イネーブリングファクタ―)、(7)イノベーション文化醸成の7つである。

・具体的には、1)イノベーションの創出に向けて情熱や好奇心をもっているか、2)そのための戦略を立てて、KGI(Key Goal Indicator)を設定しているか、3)イノベーションを創出するプロセスを明確に定めているか、4)イノベーションの進行に当たってゲートを用意し、意思決定基準やKPIを管理しているか、5)外部とのオープンイノベーションを推進しているか、6)イノベーションを培う人事制度、知財管理は確立されているか、7)挑戦、失敗、多様性などを受け入れるカルチャーが根付いているか、という点にフォーカスする。

・その結果をみて、DTCは7つの項目で平均を上回る上位企業の方が、売上成長率が高く、株価パフォーマンスもよい傾向があると分析している。また、項目ごとの点数によって、(1)‘場当たり型’が36.5%と最も多く、(2)次が‘掛け声先行型’35.1%であった。一方で、(3)7項目の水準がどれも高いイノベーションを推進するメカニズムが整っている‘メカニズム型’は14.4%であった。

・日本企業はイノベーションを起こす力が弱いのではないか、という問題意識に対して、アンケートに答えた200社余りのデータをみても、各社の判断として、その傾向が表われている。掛け声先行が多いということは、イノベーションに対するリーダーシップや戦略は立てていても、それを実行するプロセスや組織において十分でないと認識している。場当たり的というのは、会社全体として、イノベーションを推進するという体制がまだ全く不十分であるということを意味する。

・日本の企業に、イノベーションの連鎖を実現している企業はある。それが創業者のリーダーシップや一部のユニークなイノベーターに依存するだけでなく、イノベーションを遂行する組織能力を身につけている企業もある。イノベーションというのは、画期的、革新的な仕組み作りであるから、多くの企業に実現できるはずもない。一部の特殊な企業のみが成功企業としてあげられる、という見方は有力である。

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