企業価値評価におけるESGの重み~時間軸による変化

・長期が3年の会社評価では、ESGによるサステナビリティの軸の重みは、限りなく軽いかもしれない。一方、長期が30年という会社評価では、ESGのウエイトが他の3つの軸に比べて、圧倒的に重くなると想定される。

・日興リサーチセンター(社会システム研究所寺山恵副所長)の調査によると、日本におけるESG投資の規模は2015年9月現在46.0兆円である。データの基準が違うので正確には比較できないが、2014年の世界のESG投資(21.4兆ドル、2600億円、うち欧州64%、米国31%)に比べると、日本は極めて小さい。

・ESG投資には、いくつかのアプローチがある。①特定の内容を基準に投資対象から外すネガティブスクリーン:日興リサーチセンターのまとめによると、世界のESG投資ではこれが最も多い。②伝統的な投資判断にESGに関するリスクと投資機会を体系的に組み入れるESGインテグレーション:これが2番目に多い。

・③ESGについて何らかのエンゲージメントを通じて、企業に働きかけるエンゲージメント。これが第3位である。④国連グローバルコンパクト10原則など国際的規範に違反した企業を除外する規範・倫理スクリーニング。これが第4位である。

・一方で、⑤環境などESGの特定のテーマを投資アイデアとするサステナビリティ・テーマ投資や、⑥特定の社会的課題の解決を目的としたインパクト・インベストメントは少ない。

・また、1)日本では議決権行使によるエンゲージメントがESG投資の84%(米国15%、欧州17%)と圧倒的であるのに対して、米国ではESGインテグレーション41%(欧州27%、日本9%)がトップで、欧州ではネガティブスクリーン35%(米国39%、日本7%)が一番である。

・欧州では国際規範スクリーニングが19%(米国0%、日本0%)と高く、制度や考え方の違いも出ている。日本は、ESGをベースとしたサステナビリティ投資にまだ馴染んでいないが、これから増えてくることは確実である。

・投資家による企業価値評価は、主観的であるといっても、そこに何らかの合理性や普遍性を求めたい。筆者が用いている定性評価を評点する4つの軸は、現在、その重みを等ウエイトとしている。

・ただし、ベンチャー型の小型企業については、ESGの軸をはずして、3つの軸で評価している。これはESGの軸の重みをゼロとおいていることになる。なぜなら、サステナビリティを問う前に、まずはイノベーションの連鎖で成長性を確保することが第一義的課題であると判断していることによる。

・会社の寿命30年ともいわれる。その限界説を突破して100年企業を目指すのであれば、マネジメントのサクセッション、イノベーションを生み出す組織能力の内在化などの項目が重要性をもってこよう。

・一般的な日本企業は中期3カ年計画、つまり中期を3カ年で見ているので、4つの評価軸の重み(ウエイト)は同等でよいと筆者は考える。しかし、中期を10年と想定する企業も出てこよう。

・企業経営の重心が長期に移動してくれば、企業価値評価の軸の重みも変化してくる。同時に、投資家が中長期志向を強めるほど、企業行動にも変化をもたらすことになる。暫くはESGインテグレーションの企業価値評価が意味を持ってくることになろう。
 

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