Big Story世界情勢と日本株式をめぐる投資環境

(5) 現情勢の特徴、高利潤と低金利の併存をどう見るか

両極乖離する利潤率と利子率
 今の金融市場、世界経済の最も重要な特徴は利潤率と利子率の乖離にある。前述の昆虫が脱皮できなければ成長できないように、この乖離が解消しなければ経済は発展できない。現在、論理上の経済や金融市場を覆っている困難はなにか。それをどのようにすれば解決できるか。ここ10年ほど先進国の経済はどこの国も企業の利潤(ROE)、利益は市場空前である。しかし他方で利子、金利は下がっている。主要国の長期金利、日本やスイスはマイナスである。アメリカでも1.5%と歴史的な低さだ。儲かっているのに金利が下がるという極めて不思議な現象が10年に渡って続いている。これまでの世界の金融、経済の常識とは全く違う現実である。景気が良く儲かれば、その時は資金需要が高いので当然金利が上がる。利潤と利子は同じ方向に向かうのが当たり前。利潤も利子も資本のリターンなので、本来同じメダルの裏表だ。利潤と利子が両極に分化することは経済学の理屈では説明できない現象である。何が起き、どう解決するか。どのような歴史的局面にあるのか、どのような対応が望めるのか。
 
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かつてない超過利潤時代、資本余剰が蓄積する
 儲けと金利が大きく開いている状況だが、このような状況は数学でいう発散であり、その行きつくところは型(システム)の崩壊である。企業が儲かっているから大丈夫だ、借金をして株を買ったらどんどん株が上がると言って、借金のコストがゼロであることに任せて株を買い続ければ、どんどん上がった株はいずれ暴落して経済が崩壊する。つまり発散を常態化させているこの仕組みは危険なのである。なぜこのようなことが起こっているのか。その原因は世界がかつてないほどの企業の超過利潤の時代に入っていることによると考えられる。海外に工場を移せば、安い労働賃金が手に入る。或いはロボット、ITなどの技術を使えば劇的にコストが下がる。つまり企業は安易に利益が出る超過利潤の時代である。アップルやグーグルをみれば大変儲かっているが、投資をしているかというとしていない。設備はいらない。儲かったお金が行き場がなく遊んでいれば金利が下がる。正しく超過利潤である。

余剰資本の退蔵は資本の自己否定
 かつてより少ない投資額でかつてと同等の効果が得られている(設備やシステムの調達費用が低下する)ということは、資本生産性が上昇しているということだが、儲かっているのに投資の必要がなければ、余ったお金は死に金になる。金融市場においてはマネーが滞留する。これは経済を死に至らしめる病だ。資本主義は資本が形態転換、変態によって成長するのである。マルクス経済学で、Gという貨幣でもっている資本が商品W(材料、労働、設備など)に変わる。そして商品Wが売り上げにより貨幣Gに変わって再回収されるときには前よりも価値が増えている。つまりGはかつてのGではなく、価値増殖したG’これが価値創造のプロセスである。貨幣が商品、つまりお金が材料や機械や人件費に変わらないと次のもっと増える貨幣として回収できない。これが資本主義である。しかし利子率が限りなく低下し現金選好、つまり人々が「Cash is King」 と考えて現金をずっと持ち続けることになると、資本が形態転換により価値を創るという機能が停止してしまう。企業が儲かったお金を全部箪笥にしまい込んだらこの世の中から成長資本が消える。利潤率が高いが利子率が低いという現実は資本の機能不全症状を示唆している。企業が儲かる背景にある技術革新や儲かることはいいことだが、お金が遊んでいることは悪いのである。ここに経済政策の最も重要な分岐点がある。遊んでいるお金を有効に活用させる方法は政策しかない。放っておいたらこの状況は変わらないどころか悪化する。したがって投資戦略も政策次第ということになる。

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