Big Story世界情勢と日本株式をめぐる投資環境

(2) 最近の市場動向と展望 ~世界危機回避、日本円高株安悪循環から急伸へ

日本株一人負けが是正される局面に
 最近のマーケットは様々な悲観的な観測を正当化するような乱高下、市場の急激な暴落が繰り返されている。最近の情勢の最大な特徴は日本株の一人負け。7月末時点で、日本株は年初来2割下落したが、アメリカもBrexit決定あとのイギリスも株価は年初来プラスである。7月時点でこの先の展望として3つのシナリオが考えられていた。(1)日本株の一人負けがずっと続くシナリオ。それには日本経済が一人負けすることが前提とされるが、この可能性は極めて少ないであろう。(2)日本株の一人負けが是正されるシナリオ。一人負けの理由が是正されればここから秋ごろにかけて日本株が急速にキャッチアップラリーを始める。今の日経平均15,000円から世界の平均水準からすれば18,000円に戻る。この可能性は7割の確率だと思える。(3)残り3割の確率のシナリオは、日本の一人負けに世界の株価が追い付いてくる。つまり世界同時株安が起こるというもの。その場合去年の8月から起こった世界同時株安が、いよいよクライマックスを迎えてくることになる。日本株の一人負けは世界株価暴落、世界不況の先導だったということになる。

 とはいえ7月後半から米国株価は史上最高値を更新、(3)の世界危機深化シナリオは消えた。日本株式キャッチアップラリーの可能性が高乗ってきている局面である。
 
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ファンダメンタルズでは説明できない円急騰
 それではなぜ日本株が一人負けしたか、その原因は言うまでもなく円高である。半年で120円から100円まで2割も円高になった。日本株も2割下がったのでドルベースでいうと日本株のパフォーマンスはそれほど下がってないとも言える。しかしこの2割の日本株安は日本経済と市場に非常に大きな痛みを与えた。これから先のドル円レートがどうなるかによってこれからの株式の展望も変わってくるわけである。去年の11月まではほとんどの専門家は円安トレンドが続くという見解だった。しかし年初来ほとんどの専門家が突如ドル高が終わり円高に見方を変えた。根拠としてファンダメンタルズを挙げているが、私はファンダメンタルズの側面からは円高の根拠は極めて乏しいと考える。アメリカと日本の景気を比較するとアメリカの方が遥かに好調である。中央銀行の姿勢を見ても、アメリカの中央銀行は少々ブレーキを緩めても利上げトレンドには変わりない。日本の中央銀行はさらなる金融緩和で真逆。経済実体と中央銀行の姿勢を見ればドル高円安の局面である。唯一一見説得力がありそうなファンダメンタルズは、日本の経常収支の黒字が二年ほど前は赤字だったのが急速に黒字になり、今は20兆円ほどの経常黒字なので円高であるということだ。辻褄は合っているが、よく考えると日本の経常収支の黒字はすべて所得収支である。貿易の収支はとんとん。経常収支は海外に過去投資をした資産から得られる配当や利息や海外における企業利益などの収益である。海外投資から得られた果実が経常収支の黒字であり、それは円高であろうが円安であろうが、為替水準によって調整されるものでは無い。また海外での果実つまり利益は円に転換されない限り、いくら海外で利益をだしても円高要因にはならない。また米国の実質金利の低下を円高要因として指摘する向きもあるが、その原因は米国の物価上昇の高まりにも拘わらず世界的金利低下圧力により長期金利が上がらないため、その背景にあるものは米国経済の強さであり、ドル安要因と言うのは飛躍である。このように多くのエコノミストや学者が言っている円高が当たり前だと言っているのは正しくなく、ファンダメンタルズから見ると円高になる理由はない。
 
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国際危機対応のドル安円高、1998年との類似性
 ではなぜ円高になったのか。ここに昨年末からの国際金融情勢のカギがあると考える。ドル安の進行は国際金融危機対応の緊急避難策と言っていいと思う。まず1971年からの長期ドル循環、つまり実質実効レートの変化を辿ると5年から10年のサイクルで上がったり下がったりしていることが分かる。直近では2011年にドルのボトムをつけた後、ドル高が始まり、そのドル高が今年初めに終わり、今はドル安局面に入ったと議論が高まっている。今回のドル安は1998年に起こったドル安と多くの点で類似している。図表Xに見るように1998年のドル安は1995年から2002年までの長期ドル高過程において一時的に起こったドル安局面であった。1998年はロシヤルーブル危機が起こった年である。このルーブル危機によってLTCMというヘッジファンドが破綻し、モルガン・スタンレーなどの大手金融機関もつぶれるのではないかという金融危機に対応してアメリカ中央銀行は金融緩和をし、ドルの流動性供給をした。これが1998年の一時的ドル安を引き起した。しかしルーブル危機が沈静したあと、再びアメリカの金融政策は引き締めと転じ、ドル高トレンドに戻り、その後4年に渡ってドル高が続いたのである。今回のドル安は正しく類似の理由であると考えられる。昨年の12月、アメリカ中央銀行FRBは9年半ぶりで利上げをした。その時、今年2016年は4回の利上げが行われるというのがコンセンサスであったが、年明けからその利上げに対する見方が急速に萎えてきた。FRBのイエレン議長は理由を二つ挙げている。一つは新興国経済の脆弱性など国際経済に対しての配慮、新興国の通貨の下落に対する配慮としてアメリカの金融緩和姿勢を強める必要があること。二つ目は金融市場、株式市場が昨年の8月以来大きく乱高下し年初来また大きく下落した。この様な金融市場と世界経済の不安定さに対する配慮としてアメリカの中央銀行はあえて言えばドル安政策をとった。これが今回のドル安で正しく1998年に起こったことである。
 
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