金融緩和の袋小路に迷い込んだEU 第1回

英国バッシング

 英国人は6月23日の国民投票でEUを離脱すると決めた。EU離脱投票直後は、「今後数年間で英国のGDPを最大4.5%押し下げる」、「グレート・ブリテンの落日」、「長期没落の始まり」などと言われていた。また、残留派には怒りや無力感が、離脱投票した人たちのなかには、「ブレグジット・ブルー(うつ)」が広がっているなどとも言われた。しかし、テリーザ・メイ新首相が「年内には離脱交渉を進めない」と宣言してからは、幾分、英国バッシングは落ち着いてきたようだ。

 当初の英国批判は、ほとんどがデータに基づくものではなかったが、投票後の経済指標のなかには明らかに悪化したものが出始めた。それらを受けて、BOEは2009年3月以来となる利下げを行い、政策金利を史上最低の0.25%とした。

参照:主要国の政策金利の推移
zu1
 

 もっとも、これまで7年以上も、それまでの史上最低だった0.50%に据え置いていたのは、英経済に利上げできるほどの力がなかったからだ。仮にEU離脱決定がなければ、利下げがなかったかどうかは疑わしい。とはいえ、離脱決定が利下げを速めたことは疑いがない。

 私は、英国のEU離脱は長期没落の始まりなどではなく、むしろ残留していれば長期没落となっていたと見ている。EU離脱により、短期的な落ち込みは避けられないが、長期的には没落を逃れる可能性が高まったとみている。このことはつまり、EUが、このままでは没落すると見ていることを意味している。

 アンチEU政府の比率は、英国でよりも、むしろフランスやギリシャで高いとされている。そして、英国の離脱決定により、フランスなどによる離脱ドミノが起きる可能性が出てきたという。だとすれば、英国バッシングは、沈みかけの泥船からいち早く逃げた英国に対する、裏切られた思いや、羨望からきていることになる。英国は目先の困難を承知で離脱できたわけなのだ。

 EUはもともと、第2次大戦の勝者と敗者でありながら共に疲弊し、戦後の米ソ対立の中で埋没することを恐れたフランスとドイツが、将来の統合国家を目指したところから始まった。当時は世界国家という考え方があり、国境をなくして1つの国になれば、少なくとも平和になれると思われていた。「平和と自由を欧州全体に広めるべきだ」、「欧州統合でしか世の中は良くならない」との理念だ。

 ところが、2016年6月23日の国民投票では、英国人の51.9%がEUからの離脱を望んだ。このことは一方で、48.1%の人がEU残留を望んでいたことになる。報道によれば、その多くは欧州統合を望んでいた。

 では、離脱を決めた人々は、欧州統合を望んでいなかったのだろうか? そうとは限らない。欧州統合を望んでいても、統合がもはや現実的ではないとすれば、夢から醒める必要がある。また、どんなに素晴らしくても、実現性のない夢を追いかけることが大きな犠牲を伴うのなら、諦める必要があるのだ。

ヤフーブックマーク Googleブックマーク はてなブックマーク ツィートする シェアする  ライブドアブックマーク ディスカス

キーワード

 

連記事

 
 
 

新記事

 
 
みんかぶマガジン> 全ての記事> 市場解説・相場展望> 金融緩和の袋小路に迷い込んだEU 第1回