堅調なファンダメンタルズと脆弱な日本株、基底に円高をもたらした中国危機が

円高は米国の世界金融不安対策の一環か

 このように見てくると、今年に入ってからの円高は、ほとんどファンダメンタルズには関係なく、もっぱら米国の世界金融不安対応策(米国利上げ姿勢の軟化などもその一つ)の一環と考えられる。いわば人民元切り下げ回避を求める米財務省が、円高容認をその犠牲として差し出していること、それが突如の円高をもたらし、日本株の独歩安を引き起こしていると観測されるのである。ストラテジーブレティン160号(5/2)、162号(6/6)を参照。

円高の天井は近い

 となれば今後のドル円の帰趨も、中国危機の展開に大きく左右されることとなる。仮に中国経済の減速が止まり人民元下落圧力が解消すれば、当然円高圧力は止まる。他方中国の景況が再度悪化し資本流出と人民元下落が更にと進行すれば、一旦は円高圧力が強まるかもしれない。しかし、中国危機が一段と深化し人民元下落が加速し中国が「競争的通貨切り下げ」にシフトしたと受け止められるようになれば、米国はもはや円高を求めないだろう。どちらのケースでも購買力平価とみられる1ドル100~105円程度(オーバーシュートしても90円台の後半)が、円の高値圏となるのではないか。

 中国経済は当面景気対策による成長率の押し上げが観測されるが、それは長く続かないかもしれない。三つの要因が指摘できる。第一に中国では過剰投資のつけが莫大となり、物の長期成長(鉄道貨物量、粗鋼生産量、発電量、輸出輸入量など)はもはや不可能となった。第二にアキレス腱としての外貨事情の悪化、人民元下落が国内金融危機の引き金を引くと言う経路が見えてきた。第三に習近平氏と李克強氏との路線対立が顕在化し統治能力に疑問符がでている。中国に対する信認の核心、圧倒的に強力な統治能力が劣化するとなれば、投資家は人民元と中国のリスク資産投資に対して無防備ではいられなくなる。外貨転換規制の強化などによる資本流出抑制策、デリバティブを使った元買い介入、など現在の弥縫策はいつまで有効か。来年にかけて米国の利上げと中国経済の息切れにより再度資本流出圧力が高まることは必至かもしれない。中長期的には中国の危機深化は避けられないとみられるが、それと円高の相関はここ半年ぐらいで消えていくと推測される。
 
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 今後のシナリオは二本立てで行くべきであろう。目先は中国危機封印により過剰悲観の修正高の可能性もある。以下の3つの理由によりリーマンショックは再来の可能性は小さい、①過剰楽観は無く、先進国では資産バブルは見られない、②金融政策がフレンドリー、③高利潤持続、が理由である。9月の杭州G20サミットを前に中国危機が封印され続ければ意外な株高の可能性もあり得る。その後どこかの時点で中国危機の深化が起きればクライマックス的円高日本株安が起きる可能性はあるが、その先は円安転換となるだろう。

 なお以上のシナリオは、英国が今週末の国民投票によりEU残留をするものと想定している。仮に離脱となった場合短期の市場は更なる円高と日本株安にシフトすることになろうが、その後の推移は上述シナリオを平行移動して考えればよいのではないか。その幅はドル円で-5円、日経平均で-1000円程度か。
 

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