堅調なファンダメンタルズと脆弱な日本株、基底に円高をもたらした中国危機が

(1) フラストレーティングなリスクテイク環境

波乱の日本株式

 ファンダメンタルズに基づく投資家にとって、フラストレーションが高まる市場が続く。景気実態は素晴らしくはないが、悪くはない。年後半先進国世界経済は米国も、日本も欧州も着実な回復過程、いやむしろ緩やかに成長率が加速していくことが想定される。また失業率は米日独など主要先進国では完全雇用状態に近く、企業収益も過去最高水準にある。さらに株式バリュエーションは、歴史的に低下している国債利回りとの比較で著しく魅力的である。加えて中央銀行の金融政策はリスクテイクに限りなくフレンドリーである。となれば文句なく株式投資の魅力度が高まるはずなのに、株式市場は波乱気味、特に日本株式は著しく低迷し、異常な乱高下を繰り返し、鉄火場の色彩を強め、多くの投資家の足を遠のかせている。年初来の株式騰落率は日本(TOPIX)-18%、米国S&P+1.4%、英国FTSE100-3.7%、ドイツDAX-10.3%と日本株式一人負けが顕著になっている。当面はBREXIT(英国のEU離脱)が最も懸念されている材料であるが、当の英国株価はむしろ堅調である。
 
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順調な米国のファンダメンタルズ

 米国経済は順調であり、近い将来リセッションに陥る懸念は小さい。5月雇用は雇用数の増加が3.8万人と期待外れであったために市場に失望が広がったが、完全雇用の下での求人難が雇用停滞の原因、むしろ労働需給ひっ迫から賃金上昇圧力が強まっている。サービス関連の消費と投資も堅調で所得増、需要増、生産・雇用増の好循環が始動している。次期大統領候補はいずれも財政政策による景気刺激を主張しており、財政赤字対GDP比2%台と健全化した財政が新たな経済のけん引役になるだろう。それは上昇圧力を強めている物価・賃金をさらに押し上げるだろう。

 過去40 年間で米国がリセッションに陥ったのはすべて、インフレ圧力の高まりによる過剰引締め(=オーバーキル)に起因する。1980年以降の4回のリセッションは全てFF金利の長期金利を上回る水準までの利上げにより逆イールドカーブになった後起きたのであるが、その過剰引締めは過剰投資による不均衡・バブルか、または外部ショック(石油ショック)が原因であった。現在米国にはバブルや過剰投資はなく、考えられる唯一の外部要因は中国ショックである。そして万一中国ショックが起きたとしてもそれは石油ショックとは逆にデフレ圧力を強めるものなので、金融政策は緩和的となり、逆イールド(=過剰引締め)に陥るとは考え難い。唯一あり得るとすれば、米国長期金利が日独のようにマイナスに陥り、長短金利が逆転するというケースであるが、当面それも考えられないだろう。米国経済堅調の下で長期金利がマイナスのテリトリーまで低下するとすれば、それはもっぱら需給要因によるものとなるはずである。そしてそのような需給はよほどのグローバル資金のドル債への集中化によって引き起こされるが、それは強烈なドル高と米株高を伴うだろう。
 
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 日本経済も徐々に力強さ増すだろう。①消費増税先送り、財政拡大、②更なる金融緩和、③円高にもかかわらず堅調な企業収益、④実質賃金の上昇などのプラス要因が重なる。低迷してきた消費は上向く場面に入るだろう。かつてと異なり円高の企業業績へのマイナス影響は限定的とみられる。日本企業は非価格競争力、技術優位品に特化しており、円高の価格転嫁能力は大きく高まっていると考えられるからである。またマイナス金利は株式を含めた広義のイールドカーブをスティーブ化させ、余剰貯蓄を、株式・不動産投資へと押し出す(図表5参照)。不動産サイクルも空き室率低下⇒賃料上昇が作動するスイートスポットに入っている(図表6参照)。
 
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