経営者交代をどう評価するか~セブン&アイの教訓

・では一族の手を離れて、サラリーマン経営者が社長に就くようになった会社はどうであろうか。日本の大企業にはこのパターンが多い。創業者精神を綱領に掲げていても、それを本当に実践しているかとなると、抜けがでる場合がある。会社は時のリーダーに依存するが、一人のリーダーや一人のイノベーターにのみ左右されない組織能力(オーガニゼーショナル ケイパビリティ)を培っていくことが求められる。

・会社の運営において、小さな穴から水が漏れないように、突然想定外の爆発が起きないように、細部にわたって組織を動かす仕組み作りが必要である。それは大変なことである。しかし、人々がきちんと訓練され、カルチャーとして身につけていれば、その基本動作は苦痛でもなんでもない。いつもの仕草である。その組織能力を作り上げるのは、ロケットで成層圏に出る時のGのように大変な圧力がかかるが、成層圏に出てしまえば何ら問題ない、と京セラを創業した稲盛氏は諭す。

・しかし、強いといわれる組織も絶えず磨いていないと劣化してくる。特に、リーダーが人選を誤って、それが3回くらい続くと、会社はガタガタになってしまう。したがって、会社の組織能力を、経営力(マネジメント)、成長力(イノベーション)、持続力(ESG)、パフォーマンス(リスクマネジメント)の観点から評価していくことが、投資家にとっては基本動作となる。

・今回のセブン&アイの鈴木敏文氏の場合は、会社の創業者ではない。しかし、コンビニのセブン-イレブンを世界に冠たる企業に作り上げたという点では、イノベーターであり、創業者の伊藤雅俊氏から任された後継経営者であった。伊藤名誉会長は自分のファミリーは会社に入れても、次期社長には指名しなかった。

・伊藤名誉会長は、人の話を聞く優しい面はあるが、実はかなり厳しい人でもある。鈴木氏はものごとを演繹的に見通す人で、その言動には一段と厳しい面がある。このタイプのリーダーがトップに立つと、イノベーター故に戦略の立案を一人で担い、あとはいかに実行するかという布陣になる。

・強烈なワンマンリーダーからみると、自分に替わる後継者を見出すのは極めて難しい。みんな劣ってみえる。自分の戦略にそって動く人材は評価しても、自分に替わる人材としては評価できない。しかも、このタイプのリーダーの下では、次のリーダーは育たないかもしれない。リーダーの候補者は必ず意見をいうから、それが気に入られず、居場所がなくなることも多い。

・鈴木氏のいないセブン&アイが動き出す。強烈なリーダーの指示待ち世代、忠実な実行部隊から、次のイノベーターあるいは新しいリーダーが育ってくるか。これは事業における鈴木路線を継承するとしても、企業経営におけては鈴木路線を否定する必要がある。

・100円ショップ、セリアの河合社長は、新しいセブン&アイの経営行動にどういう変化がでてくるか、に強い関心を持っている。セリアがヨーカ堂の中にもっと入れるようになるかどうか、という意味である。セリアが入れば、若い女性を動員する力は高まる。つまり、ヨーカ堂の再生の変化に一段と注目が集まろう。

・井阪新社長がどういう経営体制を作っていくか。ガバナンスのあり方、取締役会の運営方法、グループ戦略の抜本的見直し、執行部門の人材の入れ替えなど、大きな変革の行方が注目される。筆者が他の企業を見てきた過去の経験に照らすと、ここで人材の抜擢を誤ると、思わぬ苦難が少し先に顕在化する。伊藤ファミリーから自立しつつも、創業者精神をどう組織能力として継承するか。トップの手腕が問われるところである。投資家としてはここを見極めつつ投資判断をしたい。
 

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