S&P 500®月例レポート

 M&A関連では、数十億ドル規模の買収案件が続いていますが、頓挫したケースもありました。製紙大手のInternational Paper(IP、5月は2.6%安)は林業大手Weyerhaeuser(WY、同1.9%安)のパルプ部門を22億ドルで買収すると発表しました。Credit Suisseはディストレスト債資産をTPGに13億ドルで売却することを明らかにしました。ドイツのJAB Holdingsはドーナツチェーンを運営するKrispy Kreme(KKD、同22.8%高)を135億ドルで買収すると公表しました。JABは先ごろ、コーヒーメーカーのKeurig Green Mountainを買収したばかりで、さらにカフェ運営のPeet’s Coffee & Teaも傘下に持っています。医薬品・特殊化学品メーカーのPfizer(PFE、同6.1%高)はバイオ医薬品企業のAnacor(ANAC、同58.3%高)を52億ドルで買収すると発表しました。石油・ガスの開発を手掛けるRange Resources(RRC、同3.4%安)は同業のMemorial Resource Development(MRD、同20.8%高)を33億ドルで買収することを明らかにしました。ドイツの製薬会社Bayer AG(BAYRY、同15.6%安)は予想されていた通り、農業化学大手Monsanto(MON、同19.8%高)に対して現金620億ドルでの買収を提案しましたが、Monsantoは提示価格が低過ぎるとして提案を拒否しました。情報技術ソリューションを手掛けるHewlett Packard Enterprise(HPE、同10.5%高)は、技術サービス部門をスピンオフさせた上で同業のComputer Sciences(CSC、同48.6%高)と合併させる計画を明らかにしました。通信大手のAT&T(T、発表当日に0.7%高)は、インターネット大手Yahoo(YHOO、5月は3.7%高)のコア事業に対して買収額を提示し、同業でストライキが収束したばかりのVerizon(VZ、同0.1%安)との買収争いになるとみられています。

 M&A関連のマイナス材料としては、油田サービス大手のHalliburton(HAL、同2.1%高)と同業のBaker Hughes(BHI、同4.1%安)の280億ドル規模の合併は、規制当局による反対を受けて白紙撤回となり、HalliburtonがBaker Hughesに対して違約金35億ドルを支払いました。事務用品小売り大手のStaples(SPLS、同13.7%安)とOffice Depot(ODP、同39.1%安)の60億ドル規模の合併計画は、競争上の理由から連邦裁判所によって差し止められました。窒素肥料などを手掛けるCF Industries(CF、同16.4%高)は米国政府によるタックス・インバージョンに対する規制強化を受け、オランダの同業OCI(OCINY)の一部(競合)事業の80億ドルでの買収を断念しました。

 その他の注目ニュースとしては、ブラジルのルセフ大統領は弾劾裁判の開始を受けて、職務停止となりました。パリからカイロへ向かっていたエジプト航空機が地中海に墜落しましたが、原因はいまだに分かっていません。ベトナムを訪問した米国のオバマ大統領は、同国への武器の禁輸措置を解除する意向を表明しました。それとは別に、ベトナムの航空会社VietJetは、Boeing(BA、同6.4%安)航空機100機、総額113億ドルの購入契約を締結しました。フランスでは、ガソリンスタンドと石油精製会社の労働者が労働法改正に反対するストライキを実行し、国内の一部でガソリン不足が生じました。Apple(AAPL)株は、長期バリュー投資家のウォーレン・バフェット氏が買い、短期投資家のカール・アイカーン氏が売却し、5月は6.5%高、年初来では5.1%安となりました。5月のS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス社は組み入れ銘柄の入れ替えが4件と忙しく、Arthur J Gallagher & Co(AJG)、LKQ(LKQ)、Digital Realty Trust(DLT)、Acuity Brands(AYI)が追加され、Coca-Cola Enterprises(CCE)Airgas(ARG)Time Warner Cable(TWC)ADT(ADT)が除外されました。

 S&P500は5月に1.53%上昇(配当を含めたトータルリターンは1.80%)して3カ月連続の上昇(4月は0.27%、3月は6.60%)となり、3カ月間のリターンは8.53%(トータルリターンは9.12%)と好調を維持しました。年初来のリターンは2.59%(同3.57%)となり、年率換算すると6.34%(同8.78%)です(2015年はマイナス0.73%とプラス1.38%)。5月の終値は2,096.96(4月は2,065.30)で、最終営業日の31日には一時2,100を上回りました。トレーダーが目標とする史上最高値(2015年5月21日の2,130.82)まであと1.59%です。今年は年明けから2月11日までに10.51%下落というスタートでしたが、2月の底値からこれまでに14.65%戻しており、5月の上昇で市場の回復基調が確実になりました。

 4月と同様、10セクターのうち6セクターで月間騰落率がプラスとなりましたが、全セクターがプラスとなった3月には及びませんでした。Apple (AAPL)が14%値下がりした影響から4月の騰落率が全セクター中最低の5.47%の下落となった情報技術セクターは、5月は同社株が6.5%上昇したことを受けて反発に転じ、5.27%上昇して月間騰落率トップとなりました。Apple(AAPL)の株価は年初来では5.1%のマイナスにとどまっていますが、情報技術セクターは年初来のリターンをプラス圏に戻し、1.67%の上昇となっています。ヘルスケアセクターが月間騰落率で2位となりましたが、上昇率ははるかに及ばず1.99%にとどまり、年初来では依然として1.30%の下落と、全セクター中最低となっています。他にも金融セクターの年初来騰落率が0.74%のマイナスとなっていますが、FOMCが6月か7月に利上げに動くであろうとの金利先高観から5月は1.82%上昇しました。原油価格が一時的に1バレル50ドル(終値は48.95ドル)を上回ったものの、今月はエネルギーセクターが騰落率最下位となりました。同セクターの年初来騰落率は10.73%の上昇となっていますが、原油価格が105ドルで推移していた2014年6月以来の騰落率は31.76%のマイナスです。一般消費財はかろうじて騰落率がプラスとなり、5月の騰落率は0.0017%の上昇、年初来では1.25%の上昇となっています。

 5月は値上がり銘柄の裾野が一段と力強い広がりをみせ、326銘柄が値上がりしました(平均上昇率は4.61%)。前月の値上がり銘柄数は269銘柄でした(とはいえ、462銘柄が上昇した3月には及びませんでした)。値下がり銘柄は177銘柄(平均下落率は5.03%)となり、前月の236銘柄から減少しました(3月の値下がり銘柄数は僅か40銘柄でした)。5月中に10%以上値上がりした銘柄数は、前月の50銘柄に対し30銘柄(平均上昇率は14.31%)となりました。一方、10%以上値下がりした銘柄は26銘柄(平均下落率は16.50%)となり、4月の31銘柄から減少しました。25%以上値上がりした銘柄は1銘柄(前月は9銘柄)、反対に25%以上下落した銘柄は3銘柄(前月は1銘柄)でした。年初来からの値上がり銘柄数は327銘柄に一段と増加し(年初から4月までの期間では315銘柄が値上がり)、10%以上値上がりした銘柄は171銘柄となっています(4月末時点では144銘柄)。一方で、年初来で値下がりした銘柄は177銘柄に減少し(4月は188銘柄)、そのうち10%以上下落した銘柄は79銘柄でした(4月の76銘柄から増加)。年初からの相場の動きで重要な点は、5月に入って楽観論や利上げを織り込む動きが(ようやく)市場に戻ってきたことを背景に、株価がプラス圏を回復したことで、多くの市場関係者が最高値更新に期待をつないでいます(5月末のS&P500は史上最高値を1.59%下回る水準)。

 FRBは9月と12月の利上げの可能性に含みを持たせつつ、6月に追加利上げに踏み切る可能性があることも示唆し、市場関係者に注意を促しました。しかしながら、5月の金利の変化からは利上げを織り込むような動きを読み取ることは難しいようです。米国10国債利回りは4月末の1.83%から上昇して1.84%で取引を終えました(2015年末は2.27%、2014年末は2.17%)。30年債の利回りは4月末の2.68%から下落して2.65%で取引を終えました(同3.02%、同2.75%)。ドルは対ユーロで上昇し、1ユーロに対して4月末の1.1450ドルから5月末は1.1125ドルとなりました(2015年末は1.0861ドル)。ドルは対英ポンドでも上昇し、1英ポンドに対して4月末の1.4611ドルから1.4462ドルとなりました(同1.4776ドル)。円はドルに対して下落して、1ドルに対して4月末の106.51円から110.63円となりました(同120.66円)。人民元は1ドルに対して4月末の6.4741元から6.5790元となりました(同6.4931元)。金価格は一時1,300ドル台を付けましたが、その後下落して1,219.60ドルで取引を終えました。4月末の終値は1,294.90ドルでした(2015年末は1,060.50ドル、2014年末は1,183.20ドル)。原油価格は乱高下し、一時1バレル50ドルを突破しましたが、最終的に4月末の同45.99ドルから上昇して同48.95ドル(同37.04ドル、同53.27ドル)、またガソリン価格は引き続き上昇して4月末の1ガロン2.162ドルに対して2.300ドルとなりそれぞれ取引を終えました(同2.034ドル、同2.299ドル)。5月のVIX恐怖指数は4月末の15.70に対して14.91となりました(2015年末は18.21)。

 6月は重要日程が目白押しとなっています。まず6月14-15日にFOMC会合が開催され、15日の午後2時にFOMC声明と最新の四半期経済見通しが公表され、同日午後2時半からイエレン議長の記者会見が予定されています。その次のFOMC会合は7月26-27日に開催予定です。6月23日には英国でEU離脱(Brexit)の是非を問う国民投票が実施されます。政治関連では、米国でも6月7日にカリフォルニア州(とニュージャージー州)で開かれる予備選で民主党のクリントン/サンダース両氏の候補指名争いに決着がつく見通しです。クリントン氏が指名獲得に向けて必要な代議員数を確保できると思われるものの、サンダース氏は選挙戦継続を掲げています。共和党では、トランプ氏が指名獲得に必要な代議員数を獲得し勝利宣言を行いました。しかしながら、16名の大統領候補が乱立し激しい予備選を繰り広げた党内を一枚岩にするために、今後も努力を続けていくことになるでしょう。これまでの強硬な発言も党内での指名獲得には効果を発揮したものの、本選で通用するかどうかは難しいと思われます。共和党大会は7月18日からオハイオ州クリーブランドで、民主党大会は7月25日からフィラデルフィアで開かれる予定です。
 

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