エムスリーの3次元経営~ビジネスモデルの変容

・エムスリー(M3、コード2413、時価総額1兆円)は医療業界でリーダーシップを発揮し、新しい付加価値を創造している。業績は躍進を遂げている。成長株の代表なので、投資家はいつ成長に陰りが出るかということを最も気にする。しかし、新しい価値創造を続けるために、ビジネスモデルの変容を内在化させようとしているので、今のところ陰りは見えない。

・ベンチャー企業は1つの商品や1つのサービスで一世を風靡しても、それがずっと続くわけではない。提供する商品サービスの競争力を保持する形で広げ、マーケットもローカルから全国へ、そしてグローバルへと伸ばしていくことが求められる。この商品サービスと市場を軸とする2次元で成長を遂げよう、というのが普通の企業の姿であろう。

・ここにもう1次元を加えることができるか。つまり、ビジネスモデルにおける価値創造の仕組みの高度化である。M3はそれを実践している。一般論としていえば、1)商品サービスを提供して、何らかのフィー(手数料)を貰うレベル、2)その商品サービスが本当に役立ったのであれば、その成果に見合って成功報酬を受け取るレベル、3)さらに、商品サービスを提供する先に直接投資して、オーナーシップを握り、自社の経営資源とのシナジーを活かして、新しい価値を丸ごと創り出すというレベルである。

・①商品サービスの多様化、②マーケットのグローバル化、③ビジネスモデルのハイアラーキ―化(階層化)、によって、成長の限界を突破しようというのが、M3の基本戦略である。KPIは利益率30%である。1)提供しようとする商品サービス、2)マーケティングする市場セグメント、3)価値を生むドライバーであるビジネスモデルが、本当にユニークであれば売上高営業利益率で30%は出せるはずである。

・もし出ないとすれば真にユニークではない可能性があり、そういうビジネスはやらない、と谷村格代表取締役は明言する。しかも、その付加価値の創出について、1)フィービジネスを10とすると、2)成功報酬ビジネスは50、3)オーナーシップ保有ビジネスは100のリターンを生み出す、とみている。

・ヘルスケアのネットサービスにおいて、最初の10年は「MR君」に代表されるように、人界戦術型の医薬品メーカーのMR(医薬情報担当者)を、ネットに代替させるビジネスで急成長を遂げた。MR君を通して日本のほとんどのドクターと繋がりを築いたので、次のフェーズとして、それをベースに医薬品の臨床検査(治験)に参入した。後発ながらM&Aを活かして、あっという間に業界トップクラスに伸し上がった。

・しかも、治験が早い。つまり、新薬の治験のデータが圧倒的に早く集まる。欧米のグローバルな医薬品メーカーから、日本の治験は遅いとみられていたが、海外よりも早く進む事例が出始めている。データが早く集まり、しかもスピードが上がれば、治験の枠も増えるので、生産性はより高まる。治験の利益率は、買収前の企業では10%もいかなかったものが、今では20%に高まり、次は30%を目指すことができよう。

・医師や薬剤師のキャリア(転職)ビジネスも急性長している。ここに登録すると、とにかくリスポンスが早い。すぐに転職の候補が返ってくる。どのくらい早いか。ネットに情報を載せると、数分でリスポンスするという。この早さがコネクションを深めるコツで、ここから全国のネットワークを活用して転職先を提案していく。

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