世界市場のリスクシナリオ~中国で高まる路線対立、権力闘争のリスク~

路線対立の顕在化、権力闘争に進展か
 そうした緊張が高まる局面で、路線対立と言う大きなリスクが顕在化しつつある。それは習近平国家主席と李克強首相の相克の表面化である。3月初旬の全国人民代表大会では壇上の習主席は、汗びっしょりで長時間のスピーチをした李首相に対して拍手もせず握手もせず、衆人環視の下で李首相に対する無視を露わにした。産経新聞紙(5月19日)上で石平氏は「『太子党』と言う勢力を率いる習主席と、『共青団派』の現役の領袖である李首相との闘いは当然、最高指導部を二分する派閥闘争として展開していくしかない」と展望している。

 それは公共投資などの景気対策を最重視する守旧派と、経済構造改革を推し進めようとする習政権指導部との対立とも重なって展開されている。共産党機関紙の人民日報(5月9日)は習主席の発言をにおわせながら、「カンフル剤の景気対策はバブル再発を招く、今後U字やV字回復は不可能で、L字型になる。1,2年では終わらない」と守旧派を批判し、低成長時代と言う現実の受け入れを迫っている。ウォールストリート・ジャーナル紙は5月18日の社説で、「習主席が遂行しようとしている供給サイドの構造改革(減税、規制緩和、ゾンビ企業の整理と財政金融の刺激策の抑制)は中国にとっては(長期的には)必要なものである。しかし、官僚たちは景気刺激に重心を移しているし、李首相も改革を支持しているものの、ケインズ政策(財政刺激策)にも前向きで、習政権の供給サイドの構造改革はスムーズではない。」何よりも習政権のサプライサイド改革には『より自由な市場経済の構築をレーニン型の一党独裁統制政治によって成し遂げようとしていると言う根本的矛盾がある』と厳しい評価をしている。

 そもそも改革の最も重要な対象である国有企業や共産党体制が既得権益そのものであり、共産党の統制力強化を改革につなげることには無理があると言われている。とすれば毛沢東主席の文化大革命の様に、既存の党組織を否定解体する新たな権力機構を構築するしかないが、習近平政権の最近の言論統制や個人崇拝的傾向の復活は、そうした試みが進行しつつあることをうかがわせる。

中国共産党体制の分岐、大いなる不確実性
 しかし、インターネットが普及し市場経済の恩恵を人々が享受している今日、文革的な二重権力構造の創出は困難であろう。習政権のサプライサイド改革は、景気の悪化と反対派の抵抗により頓挫する可能性が高いのではないか。そうなると厳格な汚職追及や言論弾圧で敵を多く作ってきた習主席の権力基盤が揺ぐことになる。習体制が続くか、李首相への権力移転に進むのか、中央政府の統制力が劣化するのか、中国の共産党独裁体制の岐路が近づきつつあると言えるのではないか。

 それは中国の政策選択において多大な不確実性をもたらし、世界の地政学を大きく変え、しいては世界経済パフォーマンス、市場パフォーマンスを左右することになる。米国をはじめリベラルデモクラシーの諸国は、政治的リベラリズムに親和的な李首相のプレゼンスの高まりを期待し、それは世界の株式市場に対しても好材料と受け止められるだろうが、その過程は著しく読みにくい。

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