うつ病を血液検査で調べる~大学発ベンチャーのユニークなコラボIR

・昨年12月に(株)慶應イノベーション・イニシアティブ(KII)が設立された。慶大では学内の知的資産を活かして、ベンチャー企業の創造に積極的に取り組み、既に13社の慶大発ベンチャーに投資し、3社が上場を果たした。この動きをさらに加速するように今回KII(出資比率:慶應学術事業会80%、野村ホールディングス20%)を設立した。

・上場3社、ブイキューブ(コード3681、時価総額235億円)、ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ(同6090、同46億円)、サンバイオ(同4592、同656億円)のうち、HMT(ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ)にフォーカスしたIRセミナーが今年2月末に催された。

・慶大は15年前に、山形県鶴岡市に先端生命科学研究所(IAB)を設立した。当時の富塚鶴岡市長の強い要請とその支援に応えて、慶大157年の歴史において初めて首都圏以外にキャンパスを設置した。

・そのリーダーが冨田勝教授(IAB所長、医学博士・工学博士)である。米国で10年研究を続けていたが、42歳の時に鶴岡市に一から研究所を作る役割を担った。

・コラボセミナーの第1部は、冨田教授によるIABの紹介と、そこでいかにHMTが生まれたかの思いを熱く語った。冨田教授は、地方の格下感をなくすことに全力投球した。世界トップクラスの研究を行い、その成果を発信し、一流の人材を育てれば、都市に対抗することが十分できると決意した。

・メタボロームとは、動物や植物が創り出す低分子の化学物質(アミノ酸、脂肪酸、糖など)で、この代謝物質群(メタボローム)を一度にまとめて測定してしまうメタボローム解析技術を開発した。今でいうビックデータの解析である。測定のプロである曽我朋義氏(慶大教授)を外部からスカウトして、二人三脚で世界トップのR&D拠点に作り上げた。

・メタボロームとは2000年に作った造語である、と冨田教授はいう。その5年後に、国際メタボローム学会ができ、第1回の学会は鶴岡市で開かれた。血液のメタボローム解析で肝臓の状態が分かる。血液からうつ病の状況が分かる。唾液のメタボローム解析でがんが分かる。農業では、だだちゃ豆がなぜ美味しいのか、地酒を美味しくするにはどうするのかなど、いろんなことが分かってくる。

・なぜ鶴岡市でそれができたのか。当時の市長の腹がすわっており、市と県が10数年で100億円の投資をしてくれた。それに応えるには成果を活かして仕事を作り出すことしかない。エキサイティングな仕事を作って、人材を集結させた。また、鶴岡市(人口13万人)の1万人の血液をメタボローム解析して観察している。

・唾液については、サリバテックという会社を作った。その代謝マップを作って変化を見る。乳がん、大腸がん、すい臓がんの早期発見が可能になるという。メタジェンという会社では腸内細菌のバランスをとる。そのために、健康な人の便を移植して腸内細菌の調整を行うという。こうした新興ベンチャーが次々と生まれている。

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