株式市場、年度初めの日本株独歩安をどうみるか

(6) 企業所得を需要創造につなげる政策、株式を活用せよ

新関:政策のカギというのはどういうことでしょうか。

武者:色々ありますが、私は端的に言うと二つだと思います。一つは長期に渡る改革です。人々の生活や働き方を変え、人々が安心して消費を増やせる環境を作るということです。雇用条件の整備、女性がより働きやすい労働環境、或いは子育て支援の整備などの様々な改革が必要です。

 しかし、もう一つ重要なことは今そこにある需要創造政策です。日本の問題はかつての様に企業の稼ぐ力がなくなったからもう何もできないということではなく、企業は稼ぐ力は十分にあり、企業の中に潤沢な所得、言葉を変えれば購買力が寝ているわけです。企業の中に寝ている所得・購買力をいかに活性化することが大事です。その方法はいくつかあると思います。最も重要で手っ取り早いのは財政出動です。今や長期金利、10年国債の利回りもマイナスです。このマイナスの10年国債の利回りで政府が借金をすることで壮大な需要創造をすることができます。アメリカでも言われていますが、日本でもかなりのインフラの老朽化が進行しています。1990年代のバブル崩壊直後は相当の公共投資をして、無駄な建物や箱物や道路を造ったと言われています。それから20年経って政府の公共事業関係費はピークの1998年度の半分以下となり、同時にインフラの様々な施設は老朽化してリプレイスも必要な状況にきています。ここはピークほどでなくても半減した公共事業を大きく増やして老朽化した設備をもう一度建て直していくことが必要です。アベノミクスの一つの柱は財政政策ですから、それを活用する。これは金利が安い時にこそできることです。恐らく安倍政権は伊勢志摩サミット、そして7月の選挙を前にして財政政策の大きなスキームを打ち出してくる可能性が強いと思います。

 第二のポイントは、企業の遊んでいる購買力を有効に活用するためのチャンネルを全開するということです。一つは購買力を賃金上昇によって労働者に転嫁すれば家計は消費を増やすことができます。そのような政策は十分とは言えなくても進行しています。もう一つは企業の儲けが家計の収入に寄与する仕組みを作るということです。ここで重要なことは、アメリカは家計の可処分所得のうち、4分の3は労働賃金で残り4分の1は利子や配当などの資産所得です。ところが日本の場合は、金利がマイナスであることや、人々は殆ど株を持っていないということによって資産所得はゼロに近く家計の所得のほぼ100%近くは労働賃金、労働所得なのです。アメリカ家計は労働者としてのポケットと資産所有者としてのポケットと二つあるので、賃金が上がったり、株価が上がったり、配当が増えたりすることで潤うことができるのです。しかし、日本の家計は、ポケットは労働賃金しかないので、賃金が上がらないと収入が増えず消費ができないのです。しかし日本の企業も儲かって配当しているわけですから、日本の企業が獲得している所得を家計の収入につなげるためのチャンネルを増やしていくことが可能です。

 それはどうすればいいかというと、私は持続的な株高と国民金融資産の株式へのシフトだと思うのです。日本は2015年末で1741兆円の国民金融資産があります。その内年金保険の積み立て分510兆円を除く1231兆円が運用可能な資金です。その内75%の920兆円が現金・預金・国債など殆ど利息ゼロの安全資産と言われる資産に寝ているわけです。他方株式保有は169兆円と14%にすぎません。国民はお金をたっぷり持っているけど、資産所得はゼロに近いのです。しかし、このゼロリターンの資産のお金の一部を株に振り向ければ、それだけで2%のリターンが貰えるのですから、それは著しく大きな家計の収入構造の変化をもたらします。このような収入構造の変化は国民の金融資産の保有構造を変えるということによって実現するのです。家計が持っている運用可能金融資産の配分として米国並みに、5割は安全の為に現金・預金・国債で、5割は株式へというシフトが実現すれば、920兆円の安全資産から300兆円の新規株式購入資金か発生するのです。そしたら株価は押し上がります。そのような人々の資金の株式資産への誘導ということが、遊んでいる資金余剰を有効に活用するもう一つのチャンネルであります。株式市場への資金誘導を金融政策的にも制度的にも誘導する政策が望まれると思います。昨年はGPIFの改革が行われ、GPIFの極端に偏った安全資産から株式などのリスク資産に振り向けるという方向に大きな方針転換が起こりました。今年はGPIFの理事長も変わりました。恐らくGPIF、簡保、郵貯などの巨額の国債を持っている機関投資家、そして個人など、株式への資金誘導によって国民・家計の一つしかないポケットを二つに増やすということによって企業に遊んでいる購買力を経済の成長につなげていくことが必要です。なにが必要かというと、はっきりと株式への資金誘導政策を明示的に行うことが必要だと思います。その為には日銀は国債を買うだけでなく、もっと大規模な株式を直接購入する、場合によっては日銀が購入しやすいETFの組成を民間の金融機関に求めて、それを日銀が買うということする。それを10兆、20兆円の規模でやれば高々5兆円ぐらいの外国人売りによってマーケットが翻弄されるということは一掃されると思うのです。つまり今起こっている外国人の日本株売りの大きな原因は、最も重要な国民の財産である株式保有構造が極めて歪んでいることに原因があるわけです。そこを是正することがアベノミクスを成功させていく上で大きな重要な政策であると思います。

武者/新関:ありがとうございました。
 

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