「対話の達人づくり」

・企業価値向上に向けて、「経営者と投資家は対話せよ」といわれる。はたして対話をして双方のパフォーマンスは上がるのか。中長期的投資が実践されるのであれば、その蓋然性は高いが、さまざまな要素がからんでくるので、現実は複雑である。

・まず対話の中身(コンテンツ)について考えてみる。投資家は価値創造の仕組みを知りたい。その仕組みがビジネスモデルである。そこで、現状のビジネスモデルをどのように進化させていくのか。ここを「見える化」してほしいと考える。投資家はビジネスモデルの進化、すなわち価値創造のプロセスの展開を共有したいのである。

・この共有ができていない。なぜか。1つには、企業のビジネスモデルが不十分で分かりにくいという面がある。あるいは、ビジネスモデルの本当の姿をみせるわけにはいかない、という可能性もある。価値創造の仕組みを詳らかにすることで、企業自らが不利になるかもしれない。価値創造に支障がでるのであれば、投資家にとってもマイナスとなるから、その秘密は開示しなくてよい。しかし、自社の強みや良さは強調できるはずである。そして、新しいビジネスモデルの構想についてもできる限り言及してほしい。

・ROEについて誤解があるかもしれない。投資家はROE至上主義ではない。つまり、まず何よりもROEを極大化しろと主張しているわけではない。しかし、一定水準以下のROEは許容できないので、8%はクリアしてほしいと考えている。もっと大事なことがある。ROEは結果としての1つの重要な指標にすぎないので、これを達成するための現場のKPIをきちんと定め、それを実行するマネジメントが各々の事業において機能しているかどうかが問われる。現場のKPIが、会社全体の価値創造にしっかり結びついているコネクティビティが鍵である。ROAやROICでもよい。投資家が納得できるところまで、一貫性を持たせてほしい。

・KPIが数量で測れないこともある。イノベーションのビジネス化に10年以上かかることもありうる。その時には「ビジョンと思い」を語ってほしい。細かく逐一報告する必要はない。考え方を明確にして説明してくれれば十分である。投資家によっては納得しないかもしれないが、そこはしかたがない。その場合でも、経営全体としては、事業ポートフォリオとしてパフォーマンスを追求し、一定の成果を上げるようなマネジメントを展開してほしい。

・では、中長期の投資を推進し、対話を通して成果を上げるにはどのような仕組みの改善が必要なのだろうか。もし現状が不十分であるという認識を共有できるのであれば、各々の立場でやるべきことがある。それにはかなりパワーを要するが、私の考えをいくつかを述べてみたい。

・好循環を作るという意味で、年金基金のスポンサー(アセットオーナー)からスタートする。彼らはまさに長期投資家である。日本株のアクティブ運用について、中長期の企業価値向上ファンドを改めて設定する。規模は大きいほどよい。そこでは、機関投資家に中長期の企業価値向上を図るようなポートフォリオ運用を求める。その時に、企業のファンダメンタル情報を重視し、それを活かすような独自の仕組みを重視して、マネージャーを選定する。

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