「上場企業が投資家を選ぶ時代~逆もありうる局面へ」

・一橋大学がCFO教育研究センターを設立する。日本では本物のCFOが十分育っていない。CFOを育成することが日本企業を強くするという趣旨である。その設立記念シンポジウムでいくつかの議論があった。注目すべき論点をいくつか述べてみたい。

・JPX(日本取引所グループ)の斎藤CEOは、持論である‘資本生産性の向上’をテーマにした。アベノミクスはまだ期待相場である。カンフル剤は長続きしない。政府に求めるだけでなく、それぞれの立場で痛みを伴う改革を行う必要がある、と強調する。

・東証の平均PBR1.4であるが、4割の企業が1.0を下回っている。事業を続けるより解散した方がよいという評価ともいえるが、実はもっと実力があるのにそれが発揮されていないのかもしれない。なぜそうなのか。それは、日本企業の資本生産性に問題があるという。

・資本生産性を示す代表的な指標がROEであるが、日本のROEは少し前まで5%、最近でも8%レベルである。米国、英国、香港の14%、ドイツ、中国の13%に比べても低い。低い理由は資本コストが分かっていないからであり、その資本コストを上回るROEを上げなくては、投資家は評価しない。これは世界の常識ともいえるが、日本の企業経営はこの点が不十分であった。「伊藤レポート」では、資本コストを7%とおいて、それを上回るROEとして8%を達成すべしと提言した。それに向けて、企業も投資家も動き出した感があるのはよい変化である。

・1989年当時、日本の時価総額は600超円を超えていたが、その時米国は470超円であった。日本はバブルの絶頂期であった。その後、日本の時価総額は300兆円を割れ、最近は570兆円まで戻っている。米国はすでに2000兆円に達しているのだから、日本がいかに低迷していたかである。TOPIXで1700、日経平均で21000円になると、つまりあと少しインデックスが上がると、時価総額で過去のピークを上回ってくることになる。

・なぜROEが低いのか。まずは企業が世界標準の経営をしてこなかったからである。最近の日立は、ようやくGEやジーメンスと応分に戦う体制を作りつつある。ROEを重視するJPX日経400のインデックスに入るには、資本効率を高める必要がある。アマダはそのために100%配当を行うと表明した。長年事業は一流、投資家対応は不十分とも言われたファナックは、株主との対話を行う部署を設けると公表した。これによって、ファナックの市場での評価は大きく上がった。

・2015年度から独立社外取締役の新しい制度がスタートする。コーポレートガバナンスコード(CGC)とスチュワードシップコード(SSC)は、企業サイド、投資家サイドの双方から対話を促進して、企業の資本生産性を高め、「稼ぐ力」を向上させようというものである。その中身を論じたものが伊藤レポートである。

・伊藤レポートは広く読まれているが、その中で課題と対応は議論されているが、答えが書いてあるわけではない。どうするかは個々の上場企業が自ら決めることである。機関投資家もどのように対話し、行動するかは各社毎に自分で決める必要がある。‘コンプライ オア エクスプレイン’の原則である。

・オムロンでは、役員会で伊藤レポートの内容をきちんと議論した、と山田社長は語っている。全員が読んだ上で議論し、それを自らの経営に埋め込んでいる。現場でも使えるKPIに落とし込んでいる。これは素晴らしい。

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