「アジアの経営者からみたアジア」

・日経主催の世界経営者会議で、アジアの経営者5人の話を聴く機会があった。それぞれの立場でマーケットとマネジメントをどうみているのか。注目すべき点についていくつか取り上げてみたい。

・タイのCP(チャロン・ポカパン)グループのCEOであるタニン・チャラワン会長(75歳)は、伊藤忠商事と組んで、各国の中堅企業とともに発展したい、と強調していた。CPグループは食品、小売り、通信などのコングロマリットで、年商は4兆円を超え、従業員数も30万人に及ぶ。16カ国に投資し、中国では正大集団として知られる。

・家族経営でありながら、どうしてこのように大きく成長できたのか。それは分業にあるという。一族で働いてきたが、目標を定め、リーダーに決定権を与えた。チャラワン氏には、3人の兄がいるが、本人に権限を与え、それをサポートしてくれた。経営にはスピードが必要である。民主的に議論をしていては時間がかかりすぎることも多い。やはりリーダーが必要で、30%のミスをしても、70%が正しいのならOKである。基本を間違えないことであるという。

・チャラワン氏は、自分が間違った時に、人のせいにする人を許さない。ミスをした理由をよく考えるべきで、ミスは成功の母でもあると強調する。幹部がミスをしても、それを認める。そして、次の成功に活かす。

・事業の選択に当たっては、先を見てその分野でトップになれるかどうかを判断する。トップを目指しても、利益が出ないのであれば、諦めることもある。まずは1位になることを目指す。それが無理なら、1位になれそうな相手と組むことを考える。

・利益については、3つの利益を考える。第1に国の利益、第2に人々の利益、そして第3にわが社の利益である。その国の利益になることを考えないと、政府のサポートは得られない。国のサポートがなければ、全てを失うこともありうる。人々の利益という点では、豊かな人も貧しい人も、全ての人々に役立つことを考える。この2つがはっきりしていれば、会社が成功する可能性は高い。

・会社は先に与えよ。そして、回収は後にする。途上国に足らないものは、資本であり。技術であり、人材である。それらを与えて、機会を創り出す。これが上手く回りだせば、会社の利益は自ずとついてくるという考えである。

・チャラワン氏は、伊藤忠商事のトップマネジメントを高く評価している。伊藤忠商事とCPが組んで、途上国の中小企業と一緒に発展するモデルを作っていく。かつて、日本が成長期にやったことを、これから発展する途上国で展開する。

・中国経済については、減速するのは合理的であり、第2ステージに入っているとみている。また、ネット社会になっても、ものづくりは必要であり、ロジスティックはますます重要になる。そこでは生産性が求められるので、実態経済のプラットフォームには大いに投資していくと強調する。いずれ‘ものづくりの天下がくる’というのがチャラワン氏の見立てであった。

・タイ石油公社(PTT)のパイリン・チューチョーターウォン社長(CEO、58歳)は、東工大で博士号を取得しており、東京は第2の故郷ともいう。PTTは民営化で2001年に上場しており、フォーチュン誌のグローバル企業ランキングで84位に入る大企業である。

・これから世界中で都市化が進む。つれてエコシステムへの負荷は増えてくる。同時に、コネクティビティとモビリティが一段と高まり、どこからでもチャンスに飛び付くことができる。よって、シスコのジョン・チャンバースが言うように、テクノロジーを軸に、常にイノベーションを続ける会社のみが生き残っていくと指摘する。

・その中でPTTは、バイオマテリアルの時代に、ケミカル企業としてグリーン化を目指す。現在タイで最大の植林を行っているが、バイオとグリーン技術を軸に、バリューチェーンを作っていくと強調する。そして、バイオプラスティックで世界のリーダーになると宣言する。

・タイは、人口6000万人、出生率は下がっており、高齢化も進み始めた。共働きも普通である。タイでは失業率が低く、人的資本も不足している。アセアン統合で移民が入ってきたとしても、経済成長が高いので、さほど大きな問題にならないとみている。

・アセアンはインフラが不足している。かつて中国はインフラ投資を優先したが、アセアンもそうすべきであるという。それが経済にはプラスに働く。PTTは、インドネシア、ベトナム、ミャンマーにも投資している。アセアンで6億人の市場が統合していく効果は大きい。電力の相互融通(パワーグリッド)もタイ、ラオス、カンボジア、ミャンマーで始まっており、将来はインドネシアやフィリピンも入ってくるとみている。

・フィリピンのSMインベストメンツのテレシタ・シー・コソン副会長(64歳)は、小売、ショッピングモール、不動産、銀行を中核とするコングロマリットを経営する。SMはシュー・マートを意味し、父の靴屋から商売を学んだ。彼女は傘下のBDOユニバンクの会長も務め、ここはフィリピン最大手の銀行でもある。

・ビジネスをやる時に、過去を振り返っても仕方がない。どこが伸びるかを見る。その意味において、フィリピンは、過去はダメであったが、これからは有望であるという。GDPは年6.3~6.9%伸びている。1人当たりGDPも3000ドルに近づいてきた。フィリピン人の出稼ぎで送金が増えており、海外送金は年250億ドルにも及ぶ。これからは都市化が進むので住宅が足らない。それを購入できる層が増えている。

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