インフレ懸念とインフレ期待

インフレ懸念とインフレ期待、皆さんに馴染みがある表現は、どちらだろうか?

私が相場を始めた頃は、インフレは懸念するもので、インフレ期待という表現は聞いたことがなかった。インフレは、通貨の価値を下げ、実質収益、実質所得を押し下げる。資産を持たない人、持っていてもその価値の上昇がインフレ上昇率に及ばないものは実質的に損をする。また、債券のディーラーとしても、インフレは債券価格下落に繋がる「懸念すべきもの」だった。しかし、デフレ環境が続くにつれ、インフレは待ち望むものとされ、いつの間にかインフレ期待が市民権を得た。

通貨や通貨同等のものしか持たない人にとって、インフレは懸念となる。一方、資産を持つものにとって、どんな資産を持つかによってインフレは期待したくなるものとなる。

・良いインフレと悪いインフレ

11日、黒田日銀総裁は昨年4月に導入した「量的・質的金融緩和」の継続により、日銀が掲げる2%の物価安定目標の達成に全力を尽くす考えだと述べた。

私は2年前、2012年9月3日付けで、以下のようにコメントした。

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パートの所定内給与が6月まで9カ月連続で前年同月を上回った。これを受けて、「企業が商品価格に転嫁し、モノの値段が上がれば困る」というコメントが聞かれた。

一方で、日本経済が低迷しているのはデフレが原因だということで、政府、日銀はモノの値段を上げるためにインフレ率の目標を1%と定めた。自民党は2%を掲げるという。デフレとはモノの値段が下がること。モノの値段が下がって景気が低迷したのだから、モノの値段を上げることを政策目標とした。

では、モノを値段を下げているスーパー、衣料メーカーや牛丼チェーンなどは、日本の景気を悪くしている元凶なのだろうか?

我々の実感とすれば、セールやアウトレットに出掛けるように、モノの値段は安い方が有難い。10数年も個人所得が伸び悩んでいるなかで、デフレでなければ生活が維持できない人も多い。政府、日銀の政策とは、一般国民の生活実感とはズレのあるものなのだろうか?

政府は消費税率の引き上げを決めたが、企業がモノの値段に消費税をそのまま上乗せすると、我々の購入価格は上昇する。売上げ減を恐れて、消費増税分を企業努力で吸収すると、企業収益を圧迫する。増税分全部を吸収することはないと思われるので、一部をモノの値段に上乗せすると、それだけで政府、日銀のインフレ目標は達成できるかもしれないが、これが経済成長にプラスだと考える人はいないだろう。つまり、これは我々の生活を苦しくさせるだけの悪いインフレだ。

一方、消費税率が引き上げられることで、住宅市場には早くも駆け込み需要が見られるという。こういった駆け込み需要は目先的には経済成長にプラスだが、需要の先食いに過ぎないとも言えるので、将来の反動需要減と増税後の落ち込みとを鑑みれば、中長期的にはマイナス効果だ。とはいえ展開次第では、プラスにもなれば、更に大きなマイナスにもなる。

プラス効果になる場合は、需要の先食いであっても、その経済効果が様々な産業に波及し、相乗効果が持続する場合だ。雇用が拡大し、個人所得が増えれば、本物の需要が喚起されてくる。

マイナス効果になる場合は、需要の先食いを本物だと誤解し、過剰な設備投資や在庫投資に走る場合だ。需要の先食いによる将来の需要減、増税による需要減に、過大な設備や在庫による供給能力過多が加わると、マイナス効果の程度が時間的にも量的にも深まることになる。米の住宅バブル時にもその傾向がみられ、住宅需要はバブル崩壊から5年後の今も回復には至っていない。それでも過剰在庫の方は、今年に入ってようやく解消されつつある。

政府・日銀がモノの値段を上げればデフレ・スパイラルから脱却し、景気が回復すると考えているのなら、実質的なモノの値段を下げるエコ・ポイントや優遇税制を景気回復の手段とすることは辻褄が合わない。経済のファンダメンタルズを反映する「需給」を無視したモノの値段の調整は、長続きしないものだ。相場操縦が一時的な値幅取りに過ぎない行為なのと同じように。

エコ・ポイントや優遇税制が景気浮揚に効果があることでも分かるように、モノの値段は安い方が実質購買力が高まることになる。モノの値段を上げることが目的のインフレ目標は無用の長物だ。諸外国の金融政策を見る限り、モノの値段が上がるインフレは経済成長を阻害するものと理解されている。

経済成長はモノの値段の上昇につながる。景気回復を背景に人材不足となり、賃金が上昇してモノの値段が上げ始める。所得増を伴うモノの値段の上昇は自然な流れで、良いインフレだといえる。それでもインフレが行き過ぎると景気が失速するので、持続的な成長を維持するために、諸外国では状況に応じて金融引き締めが行われてきたのだ。

米国で民主、共和両党の大統領候補がともに雇用拡大を叫び、連銀議長も雇用問題を最優先課題として扱っているように、安定雇用、個人所得増が経済立て直しの最優先課題であるべきだ。景気が回復すれば、インフレ率など押さえるのに苦労するほど上げてくるものだ。日本の経済政策は、どうもボタンを掛け違えているように思えてならない。
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