「野村ホールディングスの中長期経営」

・8月に野村ホールディングスのインベスターズ・デーが催された。ホームページでその時の内容が音声で配信されている。Q&A(質疑応答)も聴けるので大いに参考になる。2020年3月期の経営目標とそれを達成するための戦略について、永井浩二CEOが語っている。従来に比べて、かなり明解に将来の方向とビジネスモデルの変革について述べている。今後のマーケットを見る上でも参考になろう。

・永井CEOは2年前に就任したが、その時、2016年3月期(創業90周年)の経営目標として、EPS50円の達成にコミットした。リーマンショック前は、EPSで50~100円を稼いでいたが、その後の低迷期には2度の大型増資の影響もあって、大幅なダイリューション(株式の希薄化)が生じて、株価も低水準に留まっていた。そこで、まずはEPSを50円に戻すことを最大の目標とした。

・この目標は、2年前倒しで達成した。2014年3月期のEPSは55.8円となり、ROEも8.9%となった。そこで今回は新しい目標を定め、2020年3月期でEPS100円を目指すことにした。EPSが2倍になれば、それに見合って株価の上昇も見込めるので、株式の希薄化で影響を受けた株主もかなり取り戻すことができよう。

・では、野村のトップマネジメントは今後の経営環境をどのように認識しているのか。3つの点に触れている。1つ目は、日本経済の先行きである。デフレ時代に、日本の企業は3つの過剰を抱えてきたが、それはいずれも解消した。債務の過剰は、今やキャッシュ余剰となっており、雇用の過剰は人手不足となっている。設備の過剰も一巡し、新しい投資が必要になっている。問題にされた6重苦のうち、円高は是正され、高い法人税率も引き下げる方向となった。貿易自由化についてはTPPの土俵に乗っており、労働規制も緩和の方向にある。課題の財政赤字削減は、消費税の引き上げで一歩を踏み出した。残された電力不足も原発再稼働に向けた議論が少しずつ進展している。

・2つ目のアジア経済については、2050年に向けてアジアが世界経済の牽引役となるのは既にはっきりしており、人口動態からみて、東南アジア・中央アジアはかつての日本のように人口ボーナス期を迎える。これにつれて、アジアの個人金融資産は大幅に伸びていく。2013年の37.0兆ドルが2018年には61.0兆ドルへ伸びるとみられる。その中で、日本での経験・ノウハウが、アジアビジネスでも活かせるはずであると考えている。

・3つ目は世界的な金融規制の流れである。国際金融規制(バーゼルⅢ、OTCデリバティブ規制)や米国、EU、英国での金融規制など、いずれも世界の金融機関にとってはインパクトがあり、その対応が求められている。健全なバランスシートを維持強化するために、事業の見直しを迫られる金融機関も出ている。その中で野村の自己資本は充実しており、相対的な優位性を保っている。また、ホールセールとリテールを事業の両輪とすることで、安定した収益基盤を保っている。

・2020年のマーケットについて、野村では、①日経平均25000円(PER15倍)、②為替110円/ドル、③短期金利1%(ゼロ金利は解消)、④ホールセールのグローバルマーケットの伸び率年3%(フィープールベース)と想定している。デフレ時代が終わって、穏やかなインフレの中で企業の稼ぐ力が改善してくるので、日経平均の25000円はほぼ妥当な線であろう。

・事業法人や金融機関においてはグローバルな提携が一段と活発化し、日本企業によるクロスボーダーM&Aも一段と増大しよう。デフレの時代からマイルドなインフレの時代に入るので、個人金融資産に占める有価証券の比率もこれから上がってこよう。日本企業のコーポレートガバナンスの向上や機関投資家のスチュワードシップの強化によって、株式市場の活性化も図られよう。

・経営環境はフォローなので、ビジネスモデルの変革を通して収益力を高め、2020年3月期にはEPSで100円を目指す。税前利益でみると2014年3月期の3300億円を、4500~4700億円へ持っていく方針である。

・いくつかの事例が印象に残った。営業部門では預かり資産を現在の92兆円から150兆円に持っていく。このうち個人金融資産に占める野村のシェアを16%から25%に上げていく方針である。NISAについては、2020年に業界で1500万口座となろうが、野村ではそのうちの20%、300万口座の獲得を目指す。これによって投信残高だけでも5兆円をとれるとみている。顧客資産が150兆円になると、ストック収入によるコストカバー率が現在の17%から50%に向上する。ストック効果が大きく高まってくるので、収益の安定化が図れることになる。

・ホールセールについては、部門の利益を現在の2倍の2200億円にもっていく計画である。その半分を海外で稼ぐ方向である。海外では、まずは先進国を中心に債券型ビジネス(
Fixed Income)で収入の拡大を図る。アジアについては、1)香港、シンガポール、2)中国、3)タイ、インドネシア、4)ベトナム、ミャンマーなど、4つのカテゴリーに分けて、各国の事情に合わせつつ、ホールセールとリテールという両輪モデルで、顧客の開拓と拡大を図っていく。

・課題の1つは相続ビジネスの強化である。例として、地方で資産家であった顧客の相続を考えると、そのファミリーは都会にいることが多い。そうすると、顧客を支店単位で個別にフォローするのではなく、ファミリー全体を個別の支店を超えた複数の営業コンサルタントでカバーしていくことが問われる。つまり、新しいチームプレーが要求される。年間50兆円の相続ビジネスには、不動産、上場有価証券、現金、未公開株など、さまざまなものがある。大手の銀行との戦いにもなる。どういう強みを磨いていくかが問われよう。

・海外事業では、米、欧については実質黒字化しているが、アジアはまだ赤字基調である。マザーマーケットと位置付けるアジアで、日本の両輪モデルを現地に合った形でどのように築いていくのか。タイでの支店展開など大いに期待できよう。

・野村は2025年に創業100周年を迎える。それに向けて、アジアで揺るぎない地位を築きたい、というのが永井CEOのメッセージであった。まだ、不確定な要素もあるが、この10年でみると、目標と戦略の立て方が分かり易い形で提示された。野村のビジネスモデルの変革に引き続き注目したい。

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