アベノミクスの株式市場への戦略:ガバナンス強化とGPIF改革

いわゆるアベノミクス戦略としての成長戦略が注目されていますが、その中で直接株式市場に影響を与えるGPIFとスチュワードシップ・コードについてご紹介します。

すでに新聞紙上でも取り上げられているGPIFという年金積立金管理運用独立行政法人が日本株を買い増すのではという期待が株式市場では高まっております。この基金、我々国民の公的年金の運用を行い、その収益が将来の年金支払いにつながるもので、非常に重要です。もし、運用利回りが高くなれば、懸念されている将来の支払い問題も緩和されますし、逆に失敗して利回りが低下すれば、支払いが減額される可能性が高くなります。
この基金は、120兆円以上の基金を運用しており、安倍政権としては政府の財政状態が厳しいため、この資金を利用して景気浮上、株価上昇につなげようという、自分のお金を使わずにいかに政策効果を上げるか、ということでこの基金に注目したといえるでしょう。
この基金は90年代に日本株への投資で大きく損失を計上して問題になったため、独立行政法人として組織を衣替えした経緯もあり、その批判に対応して継続して日本株の比率を下げ、債券等の安定運用を行い、昨年度期初の株式比率は12%でした。(図1)

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ただし、昨年日本株が上昇したことから現在この比率が18%程度まで上昇しているのでは、というのが現状の推測です。そして、この18%を20%以上に引き上げるべきだ、というのが安倍政権に近い学者さんの提言で、2%でも約3兆円の資金が新たに日本株を買うとしたら、日本株が再度上昇する確率が高いのでは、というのが市場の憶測です。

ただ、GPIFは厚生労働省管轄で、理事長が権限を有しているといわれています。そのため日本の国債を当基金で投資、保有することで財務省に対してアピールしたい厚生労働省は簡単にこの圧力には屈したくないでしょう。そこで安倍政権は、その動向を監視する運用委員会の委員を刷新、8人中7人を入れ替えし株式比率を高めることに積極的な委員が増加したと言われています。 また有識者会議を設置し、その方針変更を迫っています。かなり、外堀は埋められた感じの厚生労働省は、他の予算との兼ね合いである程度は妥協せざる得なくなり、また、ある程度株式比率の拡大を実行するのではないか、というのが現状の予想です。

一方で、国民からするとむやみに株式比率を引き上げて損失が出てしまえば大変ですが、株式比率を高めた結果運用利回りが上がれば、国民も安心でき、また株式市場が上昇すれば税金も増加するので、すべてが好循環となります。
ただし、GPIFほどの大きな資金ですと、短期で株の売買を行って収益を上げることは、できません。収益を上げるためには、長期的な運用において、投資した企業がしっかり収益を稼ぎ、その企業の市場での評価が高まり、その増益率以上に株価が上がってくれることを期待するしかありません。そのため、政府は、GPIFだけでなく、企業にも圧力をかけて、株価を上げることに真剣に取り組むように働きかけています。

日本の株式市場のパフォーマンスが劣後している理由として低いROE(株主資本利益率:当期利益/純資産)が原因だと言われています。欧米では10%が当たりまえの中、日本では10%の企業は稀な状況です。このためROEの低い企業を除いた株価指数をGPIFに採用させて、ROEの低い企業へ圧力をかけること、また運用機関には、ROEの低い企業に圧力をかけるような活動を推奨するためスチュワードシップ・コード、という企業との対話を活発化させるルールを守らせようとしています。

この一連の流れが、うまく活動してくれることを祈るばかりですが、この活動にかかわらず、日本企業のROEは確実に改善すると考えております。まず1つは、デフレからの脱却です。デフレ環境では工場で作っている間に製品価格が下がってしまうわけですから、分母が一定で分子の利益が下がってしまうことから、当然ROEが下がります。もし物価が日銀が目指す2%になれば、今までマイナスで働いていたこのインフレ効果で単純に考えればROEが2%改善すると考えられます。
2つ目は、経営者の行動の変化です。今までROEが低いもう1つの要因は、経済環境が不透明なことから余剰の資金を企業が貯めていたことで、分母である資本が過剰であることです。しかし、円安やアベノミクス、また過去のリストラから、企業の収益は大きく改善し、また借金も返し終わったことからこれからの日本企業は、もうお金を貯めずに積極的に使い始めるようになると思います。設備投資や従業員への賃金増加などに使うでしょうが、当然、ある程度は資本を適正化する動きとして、株主のために配当を増加させたり、自社株買いを行うと考えられます。事実、図2が示すとおり、まだ利益は過去最高の利益と同水準ですが、配当総額はすでに大きく過去最高を更新しています。この動きが今後さらにROEが改善することが考えられます。

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現状のように企業の業績、ROEの改善傾向にある時には、今後インフレに伴い金利が上昇すると値下がりリスクが高い債券に投資するよりも、株式へ投資を行った方が望ましく、その意味で過去にGPIFが株式比率を下げる活動を行ったことはデフレ環境では正しい活動だったと考えられます。しかし、今後を考えると株式比率を上げることは合理的といえるでしょう。株式市場の参加者の一人として、また年金を将来もらう国民の一人として、ぜひGPIFが日本株への投資を拡大して、利回り向上につながってほしいと考えております。

このページのコンテンツは、スパークス・アセット・マネジメント㈱の協力により、転載いたしております。
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