チャイナ・プラスワン競争‐ベトナムの競争力を問う‐

 チャイナ・プラスワン競争で、インドネシアに後れを取っているのではないか。ベトナムは衣類分野では圧勝している。しかし、機械類では後塵を拝している。規制緩和を徹底し、外資の直接投資を積極的に受け入れる産業政策への転換が期待される。中国は賃金の高騰にもかかわらず、引き続き高水準の直接投資受入れが続いており、「脱中国」の動きはみられず、また輸出も依然強い競争力を持っている。

1、未だに傑出する中国の強さ

 アジア訪問の印象をよく聞く。ベトナムに対する評価は人によって違う。バラ色もあれば、限界説、低評価もある。見る場所、産業が違うからであろう。体験談の限界である。そこで、統計数値(貿易や直接投資)によって、ベトナム経済の可能性を検証したい。周辺諸国との比較の中でベトナムを位置づけたい。

 近年、ベトナムが脚光を浴びたのは、「チャイナ・プラスワン」論である。中国の賃金高騰、反日デモなど、中国リスクの高まりから、数年前から、日本企業の海外進出は中国から東南アジア諸国へシフトが起きるとの見立てが多い。その時、受け皿として注目されたのがベトナムである。

 しかし、最初に確認しておきたいことは中国の強さである。表1に示すように(国連UNCTAD統計)、2012年の中国の対内直接投資は1211億㌦の高水準である。これに対し、東南アジア諸国は、インドネシア199億㌦、マレーシア101億㌦、タイ86億㌦、ベトナム84億㌦である。直接投資の呼び込み競争で、依然、中国の強さは傑出している。ただし、一時は東アジアに流入する世界の直接投資の45%を中国が占めていたが、2010年以降は37%程度に落ちている。中国への一極集中を修正する動きも観察される。

 日本の対外直接投資を見ても、中国向けは1兆円台の高水準が続いており、タイ、インドネシア、ベトナム向けの3000~4000億円の約3倍である(注、2013年は1~11月分)。中国向けが圧倒的に多い(表2)。製造業に限定してみても、この動きは変わらない(表3)。日本企業の「中国回避」や「脱中国」の動きは鮮明には見られない。

 激しい賃金上昇にもかかわらず、中国の競争力が強い要因として二つの理由が考えられる。一つは、賃金は上昇しても、産業用ロボット導入などで労働生産性を引き上げ、“単位労働コスト”の上昇は抑制されている事があろう(注、2013年は中国の「ロボット生産元年」と言われる)。もう一つは、日本企業の進出要因が、賃金の安さと労働力の豊富さから、人口13億の現地市場の大きさの魅力にシフトしているからであろうか。日系企業の戦略が、中国で製造し、低コストで輸出するというビジネスモデルから、現地市場を狙って生産と販売を拡大する、という方向に変わっているからであろう。
(本節について詳しくは、叶・王「東アジア諸国の労働市場の比較」『日本経済大学大学院紀要』第2巻第1号(2013年12月)参照)。

表1 東アジア諸国の対内直接投資の推移 (単位:億㌦)
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表2 日本企業のアジア諸国への直接投資 (単位:億円)
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表3 日本企業のアジア各国製造業への直接投資 (単位:億円)
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◇日中の相互依存関係は強い
 貿易指標で見ても、中国の強さは傑出している。日本の輸入統計で見ると、中国からの輸入は2013年も増加し、16兆円に達した(1~11月、前年比+16%)。これに対し、チャイナ・プラスワンと喧伝されたタイからの輸入は2兆円(同+14%)、マレーシア2.6兆円(同+10%)、インドネシア2.5兆円(同+9%)、ベトナム1.3兆円(同+13%)である。東南アジア諸国はまだ中国の1割程度である。中国の輸出競争力の強さを示唆する。

 日中関係が尖閣問題等で極度に悪化したにもかかわらず、日本の中国からの輸入は増え続けている。機械類は総輸入の44%は中国から、衣類は75%が中国からの輸入である。政治関係が極度に悪化した2013年も、中国からの輸入は増えている(次節表5、表7参照)。日本と中国の経済面での相互依存関係は強い。

 世界最大の市場・米国の輸入統計で見ても、中国はトップである(表4、5)。米国は衣類(HS分類61+62)の38%、機械類(HS分類84、85、87、90)の25%は中国依存である。中国からの輸入は2013年も増勢を示した。

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