「日本の金融業が目指す方向」

 日経主催のセミナー(ニッポン金融力会議2013年10月)で、日本を代表する金融機関5社のトップの話を聴いた。業態の違いや各社の個性があるので一般化はできないが、私が感じた方向性について考えをまとめてみる。

〈株主主権を取り戻す〉
 大和証券グループ本社の日比野社長は、株主主権を取り戻そうと強調する。この1年で日経平均は大幅に上昇し、異常な割安感は調整されたが、外国人主体の動きが活発で、国内投資家のプレゼンスは相対的に低下しているという。国内機関投資家はポートフォーリオにおける日本株のウエイトを見直す必要があり、個人投資家も2014年から本格化するNISA(少額投資非課税制度)の活用を本格化させることが求められる。

 本格的に動けば、100~200兆円のマネーが日本株に向かう可能性はあるので、日本版グレートローテーション(マネーシフト)をリードしたい、と日比野社長はいう。日本の機関投資家、個人投資家が株主主権を取り戻すことを通して、日本を元気にしようという壮大な展望である。果たして、うまく行くであろうか。

〈家計の資産を長期投資に活用〉
 野村ホールディングスの永井グループCEOは、家計の資産を長期投資に活用すべく活動することが使命である、と力説した。外国人投資家は、小泉構造改革の時を上回るペースで、日本株を買っている。アベノミクスが日本を変えることを期待している。これがカンフル剤に終わってしまっては意味がない。脱デフレに向けて、金融の果たす役割について再考し、実践する必要があるという。

 日本の人口は4年連続で減っている。2019年からは世帯数も減少に向かう。こうした変化に対応しつつ、企業は競争力を取り戻そうと必死になっている。家計も金融もこれまでの延長ではやっていけない。構造改革には長期性の資金が必要であり、そのためのファイナンスや運用が求められる。短期リターンには合わない長期投資のニーズ、ここにミスマッチが起きている。

 個人金融資産が銀行預金として寝ているのではなく、長期的投資資金として活用されるべきである。社会インフラの老朽化にも直接ファイナンスの工夫が必要である、と永井グループCEOはいう。家計の資金を長期投資として活用する仕組みとして、上場インフラ市場作り(インフラファンド、インフラトラスト、外国ファンドなどの上場)も本命の1つであると主張する。

 2013年6月末で1590兆円ほどある個人金融資産の活用こそがカギである。確かにNISAを眠った資産を呼び起こす起爆剤にすべきである。投資を国内に限る必要はない。海外投資に活用して、日本全体としては所得収支で稼ぐというのも重要な方策である。

〈日本に軸足をおく〉
 日本の金融業は本当に世界に打って出られるのか、この問いに対して、みずほフィナンシャルグループの佐藤CEOは、まずは日本に軸足をおいてグローバル化を促進する、と主張する。景気が良い時に海外展開を進め、業績が落ち込んでくると引き上げるというのでは、真のグローバル化は進まない。

 そこで、日本を代表するグローバル企業30社とその戦略を語り合って、彼らに貢献する中で、国際業務の収益基盤を向上させていくという。しかし、絶好のタイミングにもかかわらず、反社会的勢力との不祥事があらぬ展開をみせている。賄賂、談合、マネロン、瑕疵などの不正を、自ら正す能力があってこそ攻めていける。金融は放っておくと、自己増殖しかねないので、くれぐれも自制と牽制が求められる。

〈壁を超えて、プロジェクトのコーディネーターへ〉
 日本の壁を越えて、プロジェクトのコーディネーターになるべし。三井住友銀行の國部頭取(全銀協会長)の言である。銀行規制は強化の方向にあるが、邦銀にとっては復活のチャンスでもある。アジアのGDPの年間増加額は、イタリア1国のGDPに相当する。銀信証(銀行・信託・証券)が一体となって、成長産業クラスター(新エネ、環境・インフラ、農業、水資源、ヘルスケア)などに総合サービスと提供するという。アジアを中心とする新興国に対して、マルチフランチャイズ戦略で、フルラインの銀行ビジネスを作っていく方針だ。

 壁を越えるには、人材がカギを握る。日本人の会社であってはならない、と強調する。日本人も外国人も共通の価値観をもって仕事ができるように、グローバルリーダーシップ研修、内外一体となった新人研修、外国現地スタッフへの日本型研修の導入など、さまざまな工夫を本格化させている。

〈アジアでNo.1を目指す〉
 さらに大胆なグローバル展開を三菱UFJフィナンシャル・グループの平野社長は推進している。2014年7月を目途に、BTMU(三菱東京UFJ銀行)米州本部と子会社のユニオンバンクを統合して、新しい銀行(持株会社)を設立する。ドル預金を活用して、外貨ファンディング力を強化しつつ、業務と経営の一体化を図って、米国トップ10に入る金融機関作りを目指す。

 アジアでは、この7月にタイのアユタヤ銀行を買収して、BTMUのバンコク支店と統合することにした。タイのリテール、中小企業の顧客基盤に、BTMUのグローバルコーポレートバンキングのノウハウを融合しようという考えである。タイはグレーターメコンの中心であり、2015年のアセアン統合で市場は一段と広がる。そこでの事業拡大を狙っており、アジア№1を目指す作戦である。BTMUのグローバル展開は、日本人中心ではないという点で、次のステージが入ってきたといえよう。

 アベノミクスの成長戦略は、社会インフラの構造改革を通して、人々の生活を改善させようとしている、その前提は日本の企業が強くなることである。企業はもっと大胆に投資をして、グローバル展開を目指すべきである。金融業はファイナンス機能を通して、投資を促進させていく重要な役割を担う。自らインベストメントバンクやプライベートバンクの機能を担ってもよい。プロジェクトのコーディネーターとして、大きな仕掛けを推進することも求められよう。日本の金融業が本当に強くなれるかどうかに、日本の再生はかかっているともいえるので、その行方に注目したい。

日本ベル投資研究所の過去レポートはこちらから

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