EC市場の拡大
電子商取引いわゆる「EC」の市場拡大が続いています。EC市場は日本でも前年比+10%程度の成長を遂げていますが、中国では同+50%以上の高成長を続けています。中国のEC市場規模は2011年にはすでに日本を上回っており、2012年では日本の2倍近くにまで拡大しています。中国は個人消費全体の成長が続いていることに加えて、消費全体に占めるECの割合、いわゆる「EC化率」が急速に高まっています。日中のEC化率を見ると2009年は両国ともに2%程度でしたが、2012年には日本が3%強なのに対して、中国は6%強にまで拡大しています(図表1)。
その中国のEC市場において、圧倒的なシェアを誇るのがアリババ・グループ(阿里巴巴集団)です。アリババ・グループは馬雲氏により1999年に中国杭州で設立されました。設立当初はインターネット上でのB to B(企業対企業取引)のプラットフォームである「アリババ・ドット・コム」の運営を主たる業務としていましたが、2003年から個人向けのECサイトタオバオ(淘宝網)を設立し個人向けの事業を開始しました。タオバオは出品料がかからないことや決済手段の安全性などが評価され、中国のC to C(個人対個人取引)市場において9割超の圧倒的シェアを有しています。タオバオのサービスはC to Cの分類に入りますが、純粋な個人間取引というより、通信販売を行っている事業者が主たる売り手となっています。ただし、タオバオの取扱商品はノーブランドやニセブランドなどもあるという印象から「安かろう、悪かろう」というイメージもあり、大手企業も出店には積極的ではありませんでした。そこでタオバオの新サービスとして2008年にBtoC(企業対個人取引)サービスのTmall(天猫)を新たに立ち上げました。Tmallは出店保証金や販売手数料を徴収するモデルで、メーカーや正規代理店のみが出店できるため、商品の質が高いサイトになっています。Tmallは中国のBtoC市場で4割超のシェアを有しており、タオバオに比較すると低いですが、こちらもトップシェアを有しています。
アリババ・グループは2013年9月現在、株式を上場していない(※1)ため会社に関する情報は限定的ですが、大株主であるソフトバンクや米ヤフーの資料に取扱高(流通総額)や財務状況についての情報が部分的に掲載されています。それを見るとタオバオの取扱高は世界の大手企業であるイーベイやアマゾンと比較しても圧倒的であることがわかります(図表3)。
(※1)グループ内企業であるBtoBの事業を行っているアリババ・ドット・コムは2007年に香港市場に上場したが、2012年6月に上場を廃止した。