「“円安は株高”の次に来るもの」

 最近の株式市場をみると、円安と株高は連動しているようにみえる。1ドル80円を切るような円高局面では、日本企業の競争力が衰え、海外生産シフトが一段と進んだ。世界の歴史をみると、通貨が強くなって潰れた国はない。逆に通貨が安くなって、資本逃避とインフレに見舞われて沈没した国はいくつもある。円高のように通貨が高くなって、輸入物価は安くなり、海外旅行に行った時に通貨高が実感でき、海外企業のM&Aが割安にみえるといっても、国内のデフレが長期化するようでは、経済の元気がなくなる。

 何よりも働く人々の所得が増えずに、名目では減少が続いた。我々は名目の世界で生きている。実質所得や実質GDPよりも、名目が適度に増える方が実感には合う。金利はゼロよりは下がりにくいので、従来型の金融政策では打つ手はなくなり、量的緩和を継続している。実質所得を重視するなら年金も下げるべきだが、そこには名目の原理が働いて、必ずしもそうはなっていない。

 アベノミクスの効果、異次元の金融緩和策で円は100円/ドルまで戻した。これを安定化させられるかが1つの試金石である。通貨は1国だけではコントロールできない。米国、欧州、アジア(中国)とのバランスの中で何らかの均衡点を模索する。あるべき基準、望ましい水準を求めてもなかなか思い通りにはならない。

 米国の景気は回復に向かっている。住宅の動きがカギを握っている。雇用の状況がよいという指標が出ると、米国の景気回復が早まるので、長期金利の上昇も連動してくる。そうすると、日米金利差上、円はドルに比べて安い方向に動く。“円安は株高”となって反応する。一方、米国景気が順調に向上するなら、大幅な量的緩和(QE3)は縮小に向かう。このテーパリングによる金融引き締めを懸念して、米国株式市場は調整する。そうすると、日本をはじめ世界の株式市場もそれに反応して弱くなる。

 日本企業は、今中国からアセアンに向かっている。中国経済が発展して内需に期待できるとしても、政治的リスクと現実のコストアップが、生産拠点としての中国に見直しを迫っている。アセアンの方が親日的であり、コスト的にも安い。アセアンの中の新興勢力(ベトナム、ラオス、カンボジア、ミャンマー)も政治の安定で魅力を増している。

 米国経済はしっかりしている。円安になって、日本企業の輸出採算も戻ってきた。数量的にもいい方向に向かっていこう。日本の潜在成長率は0.7%前後なので、これを上回る実質GDPの成長率によって需給ギャップも縮小する。

 今年度はよいとして、問題は消費税が上がる来年度がどうなるか。まずは消費税を上げるかどうかである。安倍首相は慎重に判断する姿勢を強調する。増税によって、国民の実質所得にもネガティブな影響を持つので、その分だけ実質成長率は確実に下がる。

 そもそも消費税を上げるというのは、国民に負担を強いることである。それを将来社会保障に活かすということで納得してもらうはずだが、本当にそうなるか、国民の不安は大きい。消費税を上げずに財政赤字が拡大するままでは、日本への信認は低下し、いずれ厳しい局面に立たされる。

 2014年の海外の回復はさほど強いものではない。日本も円安になったからといって、かつてのような輸出主導の景気拡大は期待できない。欧州は今年後半から債務問題も一巡し、底入れしよう。中国は過剰設備、過剰在庫で従来のように順調にはいかない。成長率は7%台にとどまろう。

 日本の最大の課題は、円安によって価格競争力が戻ったといっても、製造業の非価格競争力は相対的に落ちている。非製造業も含めて、日本企業の競争力をどのように強化していくか。ここがポイントである。過当競争に陥るのではなく、何よりも差別化していくことである。古くなった設備を単に更新するのではなく、他社と違ったイノベーションを持ち込むことである。非製造業においても、単なる出店競争や同一サービスの拡大競争ではなく、違いを出していくことである。物流も含めて新しい仕組み作りに取り組んで、他社を出し抜く必要がある。

 国内の個人消費はよくなっている。今のリード役はシニアである。日銀の推計によると、60代、70代の消費性向が上がっている。資産効果が表れて、マインドが変化してきたともいえる。サラリーマン世帯の所得が増えてくるのはこれからである。その時に消費税が上がって、水をさされてはたまらないという懸念はある。

 しかし、消費税を上げる環境は今しかない。前回(1997年)のようなアジア金融危機が生起することがなければ、今回は乗り切っていける。局面が変わりうるのは、何らかの付随的なショックによって足を引っ張られる時である。その時には機動的な政策運営が求められる。

 デフレ脱却はできるのか。CPI(消費税除く)の+2%達成について、日銀は強気であり、民間エコノミストは悲観的である。できそうもないことをできないとみるか、政策としてやり切るとみるかの違いである。

 日本企業にとって肝心なことは、この2年間に競争力を強化することである。円安やマクロ景気刺激で一息ついても、企業の国際競争力は高まらない。長期衰退の中の小休止局面に終わってしまう。グローバル経営を推進する体制を日本国内においても構築し、力をつける企業が続出してほしい。その力を持っている企業は多い。

 アベノミクスの成長戦略を、政策のサポートを受けて企業が実践していく。国内に活力が戻ってくる。日本企業の競争力、収益力が一段と高まってくる。もし日本企業の全体が力を付けてくるとどうなるのか。その局面では、再び円高になろう。これはよい円高なので、その局面では“円高は株高”という評価に結び付くはずである。円安で株高というのはまだ本物ではない。本物の競争力で勝負してほしいと願う。

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