「福島の復興は現場から~アベノミクスのもう1つの軸」

 根本匠(たくみ)復興大臣の話を聴いた。復興庁は何をやっているのか、印象に残った内容について、いくつか検討したい。根本大臣は福島県の郡山出身で、建設省を経て、93年に衆議院議員になった。復興大臣であると同時に、福島再生統括担当大臣でもある。

 大震災の被害は甚大であったが、復旧、復興については、宮城、岩手と福島では状況が異なる。福島は原発の影響があるので、さまざまな対応策について分けて考え、手を打っていく必要がある。その意味で福島は特別なのである。

 政権交代後大臣に就任して6カ月、いかにスピードを速めるかに腐心してきた。福島の再生は遅れていた。予算を獲得すると共に、復興体制を見直した。現地に、福島復興再生総局を置き、東京には福島復興再生統括本部を作り、大臣自らが本部長として働いている。

 5カ年の復興予算を19兆円から25兆円に増やした。宮城、岩手は津波被災への対応が急がれ、住宅と生業(生活のための産業振興と雇用の確保)が中軸である。一方、福島は別である。

 福島ふるさと復活プロジェクトとして、3本柱を作った。16万人の長期避難を余儀なくされている人々に、1)早期帰還のための区域の見直し、2) 仮設ではない復興公営住宅の準備、3)屋外活動が制約されて体力の低下や肥満が懸念される子どもたちが元気に動き回れるように、子ども元気復活交付金の活用を図っている。屋内体育館や遊具の更新が喜ばれている。

 復興庁は各省庁から出向してきた寄り合い所帯ではあるが、その活動の主旨や財務省からの出向者もいるので予算は通り易い。復興の司令塔として、現場主義に徹して、各省庁に跨っている問題を整理し、指示して、各省庁を動かし、現地の復旧・復興のスピードアップを図ることが最大の仕事である、と根本大臣は語る。

 東北の復興について、いくつかの事例を見てみよう。1つは、住宅再建と高台への移転である。津波が到達した場所を避けて高台に移るにしても、通常は5年も掛かってしまう。それをいかにスピードアップするか。法定手続きの簡素化、工程表の見える化(いつまでに何戸できるかをはっきりさせる)、人手の増強などによって、1年半ほど早めるべく動いている。

 人手不足、資材不足に対しても手を打っている。復興、復旧の仕事を発注するのに人手が足らない。この発注者支援に1800人を動員している。自治体からの職員の応援、OBの活用、海外青年協力隊の協力などである。特に、海外青年協力隊は役に立ってくれていると強調する。

 三陸自動車道を復旧するのにコンクリート用の生コンが足りない。そこで公共事業として生コンプラントを作るように手配し、供給力をアップさせた。公共工事の単価も、人手不足を反映した賃金アップを考慮しないと対応できない。そこで、年1回の定期見直しといういつもの方法ではなく、迅速に検討し21%ほどアップさせることを決めた。

 大事なことは、具体的な問題にいかに手を打つかである。実際に実行するのは所管の官庁であるが、それを横割りで推進する役目を復興庁は担っている。

 2つ目は、雇用の創出である。生業の再生、つまりは産業、企業が再生して、働く場所を確保しなくては生活が続かない。そのために、雇用創出企業立地補助金を初めて作った。また、中小企業のためにグループ補助金も出せるようにした。仮設店舗ではなく、しっかりした共同店舗で商店街を作るとすると、建物の4分の3に補助金がでるわけだ。

 3つ目は、復興交付金の運用の弾力化である。被災地からの要望に合わせて、まちづくり、観光再生、住民の合意形成、私立幼稚園整備など、従来の復旧の枠組みでは対応できないものにも効果が行き渡るようにしようとしている。40の事業を対象に、一本まとめて国が応えるというのは初めてである。

 4つ目は、現場主義の徹底である。根本大臣は、復興庁はホッチキス型のペーパー取りまとめ官庁ではない、と強調する。現場の情報を活かして、各官庁を動かすようにする。そのためには、必要な法令はすぐに見直していくことを各大臣に掛け合っていく。

 例えば、福島県の相馬では、高台に移転したいが、農地の転用許可が必要で、これが足かせとなって動きが取れなくなっていた。そこで農地転用許可を不用にする措置をとってもらうようにした。それで、農地の買取りが一気に進んだ。

 郡山からの要請で、米の出荷について、全量検査をして問題がないものを出荷しているにも関わらず、「米の事前出荷制限区域」という名称が使われ、消費者に不安を与えかねなかった。そこで「全量生産出荷管理区域」という名称に変えた。

 根本大臣は5月の連休にチェルノブイリを視察に行った。福島とチェルノブイリの違いをはっきり認識しておくためである。午前1時に羽田を出るフライトに乗って、朝6時にフランクフルトに着いた。これを使ってみて、自身も関わってきた第1次安倍内閣の時に推進したアジアゲートウェイ構想、オープンスカイ構想の一端を実感したという。オープン&イノベーションで成長戦略を推進するのが本筋である。

 成長戦略は単なる規制緩和ではない。イノベーションによって需要がついてこなければ、規制緩和による競争促進は産業、企業が疲弊するだけだと懸念する。実際、交通運輸セクターの賃金は小泉政権以来25 % 下がり、建設セクターでは30%ほど下がった。よって、パイの拡大を図る成長戦略を打たない限り、本物のデフレ脱却はできない。アベノミクスは、小泉時代とは違う意味で、日本の再生を実行していくと強調する。

 東北の復興、とりわけ福島の復興は、そのシンボルにもなるので、復旧と復興、再生と成長が一体となるような次の政策に期待したい。

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