「アナリストから見る統合報告」

 IIRC CEOのポール・ドラッグマン氏を囲む会合で、アナリストから見る統合報告について話をした。その論旨について、いくつかコメントしてみたい。

 4月に出されたフレームワークの草案(コンサルテーションドラフト)を読むと、全体としては共感できる。それは、従来のアニュアルレポートとCSRレポートをコンバインして、1つにコンパクトにまとめるという発想ではなく、ビジネスモデルが根幹に座っているからである。

 ビジネスモデルをその組織が有する組織能力(organizational ability)と捉え、価値創造の仕組みと見ている。その組織を運営するにはガバナンスが必要であり、何らかの明確な組織目標が必要である。

 私の考えでは、今のビジネスモデルからどのような価値を生み出していくのか。その価値を高める方策が戦略である。と同時に、よりよい価値が生み出せるようにビジネスモデル自身を変えていく。ビジネスモデル(BM)を現在のBM1からの次のBM2に変えていく方策こそが戦略である。

 価値創造の仕組みであるBMを動かしていくには。その構成要素であるキャピタル(資本)が必要である。IIRCでは6つのキャピタル、金融資本、製造資本、知的資本、人的資本、社会関係資本、自然資本を定義しているが、これらとBMの関係がなかなか分りにくい。

 一般にお金は必要であり、マニュファクチャリング(製造)のしくみも重要である。人材は最も大事なもので、知的資本(知財)も競争の源泉である。世の中との関係はさまざまであり、その繋がり方は関係資本とも言われる。自然はその組織が存在する前提であり、勝手に浪費してもよいものではない。

 企業や組織が価値創造の活動を行えば、そのパフォーマンスやリスクが問われる。キャピタルが生み出すアウトカム(結果としての成果)も見ていく必要がある。そのプロセスにおいては、何が重要であるかというマテリアリティ(materiality、重要性)に着目する必要があり、重要な要素(コンポーネント)との結びつきを示す情報のコネクティビティ(connectivity、連結性)にも注意を払いたい。

 個別の要素をバラバラに考えるサイロ思考(silo thinking)ではなく、価値創造をする組織能力に重大な影響をもつファクター間のコネクティビティ(結び付き)やインターディペンデンシー(相互依存性)について十分考慮する統合的思考(integrated thinking)が求められる。

 その組織のコアがBMであり、BMはキャピタルを使って、新しいキャピタルを生み出していく。その時、BMの頑健性(robustness)や復元適応力(強靭性resilience)がいかにしっかりしているかが問われる。ここが弱いと、環境変化にBMがついていけなくなる。

 社会関係資本という時の1つの例は、サプライ・チェーン・マネジメントである。これもBMを構成する1つの重要なキャピタルである。

 アウトカムとはキャピタルから生み出されるものであり、例えば人的キャピタルのアウトカムとして、社員のモラルの水準がある。あるいは、組織としてのレピュテーション(評判)も1つのアウトカムである。

 ここでいう価値とは、期待される将来キャッシュ・フローの割引現在価値であるというDCFモデルによる貨幣的価値に限るものではない。もっと広義である。その価値の最大化を図るという考えである。この点に関して、私は価値の最大化でなくてもよいと考えており、一定の満足水準を満たせばそれでよしとする考えを思っている。

 コネクティビティ(連結性)についても十分検討されよう。価値創造の仕組み、即ちBMの将来の姿に対する戦略についてストリーをもって語れば、自ずと重要なファクター間のコネクティビティには明確に言及しなければならないので心配する必要はない。

 このように理解すると、企業の価値評価について、私が折に触れて主張してきた3つの点は、統合報告(IR)と何ら矛盾するものではないと納得できる。すなわち、1)投資家は、結果、成果だけでなく、価値創造のプロセスを理解し、共有したいのである、

 2)企業価値評価の視点は、 ①市場性、②革新性、③社会性にある、3)企業価値評価の軸は、①経営者の経営力、②企業の成長力、③変業変動のリスク、④企業の持続性にあり、その4つの軸でレーティングしていく(ベルレーティング法)、という考えである。

 IIRCのフレームワークはまだ曖昧で、理解できないことも多い。私の理解が間違っているかもしれない。しかし、企業の価値創造の活動を長期的に評価していくためには活用できそうである。企業がそういう姿勢を強めれば、投資家もそれを利用して、独自に投資判断をするレベルをそれぞれの立場で高めることができよう。当然、本来の目的である投資パフォーマンスの向上に結びつくはずである。まずは、公表されるパイロットレポートをしっかり読んでみたいと思う。

日本ベル投資研究所の過去レポートはこちらから

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