「IIRCのP.ドラッグマンが語る統合報告」

 IIRC(国際統合報告評議会)は、2013年4月に統合報告(IR)のあり方に関するコンサルテーションドラフト(フレームワーク草案)を公表した。その関連でIIRCのCEOであるポール・ドラッグマン氏が6月に来日し、さまざまな会合で話をした。私も参加した1つの会合で、ドラッグマンが語っていた話の中から興味ある点をまとめてみた。

 まずは、T.S.エリオット(英国の詩人・ノーベル文学賞)の詩から引用して、“地球に来て地球を去る”、それを知っている世紀に住む私たちは、情報の中に埋もれている知識をもっと活かす必要がある。という。

 この1年のIIRCの活動では、IRのパイロットプログラムに世界の97社が参加して、見本となる統合レポートの作成に取り組んでいる。そこでの反応を見ると、レポートを作るメリットが会社自身にもはね返ってきている。パイロット企業にアンケートを取ると、IRの作成は難しいが、9割以上の会社が良いデータを載せることに集中することができ、社内のサイロ(垣根)を崩すことに成功しているという。

 ドラッグマン氏がIRに関わることになったきっかけは、サステナビリティと会計について検討する過程で、従来のモデルを変える必要があると感じたことにある。英国会計士協会の会長をしていた時に、2006年、チャールズ皇太子がIRの活動を支援してくれることになった。人というのは、何を知っているかよりも、誰を知っているかが重要であると実感した。

 金融危機後、今のディスクロジャーには限界があるという認識のもと、国際的な視点で南アのマービン・キング博士(IIRC議長)が世界で関心のある人々を一堂に集めた。2010年夏、ジェームズ宮殿に世界の関係者25人(日本からは当時の東証の斎藤社長が参加)が集まり、1時間の会議でIIRCを推進しようと決まった。これが第1回の会合である。

 ドラッグマン氏はCEOとなり、実質的にこの組織をリードしている。以来、彼は好きなゴルフを止めて、世界を飛び回り、IIRCの活動を推進している。

 IIRCの組織運営の財源はどうなっているのか。IIRCのスタッフは9カ国に30人ほどいるが、会計事務所からの出向が多いので、組織としての負担は少ない。IIRCのメンバーファームからの寄付が4分の1、メンバー持ちの人材供給が2分の1、パイロットプログラムへの参加収入が4分の1(1社当りは少ないが、100社が参加)という内訳である。

 IRは、現在いろいろ試行錯誤の段階にあるが、いずれ強制されるようになるのだろうか。これに関して、そのような方針はない。投資家が有益と感じてくれればよい。グローバルに見て、マーケットが望んでいることを具体化していく。今までのいくつかの報告書に加えて、もう1つ統合報告書を企業に作らせようという話ではない。

 IR(インベスター・リレーションズ)からみると、今行っている活動をストラクチャーとしてまとめ、フォーカスを当てようとしているようにみえるかもしれない。実際、その通りである。最近出されたSAP社(ソフトウエア)の統合レポートは、フォーマットとしてよくできていると、ドラッグマン氏は評価する。

 大事なことは、従来の財務レポートとCSRレポートをコンバインすればよいというものではない。いかに2つをまとめ上げるかというように考えないでほしいという。CSRレポートにあるお金に換算できないものを、財務レポートにどうコネクトしていくかという話ではない。

 IR(統合報告)は独自に考えるべしという。つまり会社のビジネスモデルと戦略を説明するのが最も重要な第一歩である。その視点から書き下ろしていく。そうすると、従来の財務レポート、CSRレポート、環境レポートなどの中で、何が有用であるかが分ってくるという考えだ。

 日本の多くの企業が作る中期計画(MTP)はユニークで、他の国にはないカルチャーである。豪では、先行きをどうするかは外部に対して秘密であるとはっきり言う。この点で日本は進んでいると評価する。

 IRは誰のためか。さまざまなステークホールダーが利用可能であるが、第一義的には投資家のためである。重要なことは、会社のエートスが分ったという状況をもたらすことである。受け手としての投資家が、その企業や組織の本質を理解できるようにすることである。

 では、IRで何を語るのか。それは、組織の価値創造についての簡潔なコミュニケーションが目的なので、戦略、ガバナンス、業績、見通しなどについて語る。そのコアはビジネスモデルであり、組織がもつ6つのキャピタル(金融資本、製造資本、知的資本、人的資本、社会関係資本、自然資本)のインプット、アウトプットを具体的に示す。

 日本企業でも、こうした考えに沿った統合報告書作りが始まっている。馴染めないことも多いかもしれない。まずは、細かいことに捉われることなく、“わが社の統合報告書”を書き下ろしてみることをお勧めしたい。我々が目標とする“あるべき投資家”(desirable investors)はそれを求めている。

日本ベル投資研究所の過去レポートはこちらから

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