5月下旬のボラティリティについて

 5月23日以降、日本の株式市場は激しい値動きをしています。図1を見ると分かるように、日中の値幅が非常に大きくなりました。値動きの激しさをボラティリティとよびますが、実はボラティリティにもいくつか種類があります。詳しい説明は省きますが、オプションの取引価格から逆算して得られる、投資家が予想しているボラティリティがあります。これをインプライド・ボラティリティとよびますが、オプションは満期までの期間によって価格が違うため、期間ごとのボラティリティを計算できます。例えば、今後1ヶ月でどれくらい市場が上下するか、今後1年ではどうか、といった具合です。

 図2は期間ごとのインプライド・ボラティリティを示したものです。数値は年率換算したものです。6月19日の今後1ヶ月間のボラティリティは年率36%で、1日に換算すると2.3%です。つまり、1日の上昇・下落が2.3%くらい、足元で13,000円ぐらいの日経平均で言えば300円くらいの上昇・下落、は普通であると投資家が思っている、ということになります。図2で特徴的なのは、今後1年間という長期のボラティリティがそれほど上昇していない点です。つまり、短期的には、乱高下すると予想している投資家たちも、長期的にはそんなに上がったり下がったりするとは考えていないことが分かります。これはつまり、投資家たちは実体経済や企業のファンダメンタルに基づいた長期的な失速を予想しているわけではなく、短期的なテクニカルな要因で乱高下すると予想している、と推測できるかもしれません。

 このテクニカルな要因ですがさまざまな要因が複雑に絡み合っており分析は容易ではありません。そのため、はっきりしたことは分からないのですが、いくつかの可能性がある要因が挙げられています。5月23日のロイターの記事では、「オプションのヘッジ行為」が激しい値動きの助長の要因になっていることについて述べられています。この「オプションのヘッジ行為」とは何でしょうか?簡単な例を用いて説明をしてみます。
 例えば、証券会社が、満期が3ヶ月後、行使価格15,000円の日経平均のコールオプションを投資家に大量に販売したとします。このコールオプションは、日経平均を3ヵ月後に15,000円で買う権利、という意味です。日経平均が3ヵ月後に15,000円を超えると、その超過した部分を、証券会社が投資家に支払います。たとえば、販売時点では日経平均が12,000円くらいだったとしましょう。日経平均が3ヶ月間あまり動かなければ、証券会社は投資家に何も払わなくて良いので、オプションの販売価格分もうけがでます。ところが、例えば、日経平均が短期間で14,000円くらいまで急上昇すると、投資家に超過分を支払う可能性が出てくるため、支払い原資を確保するため、日経平均先物を買います。先物を買うことによって、さらに日経平均が上昇して15,000円を超えたとしても、先物の上昇でもうかった分を支払いに回せるので損得ゼロに出来ます。このように損得ゼロになるように先物を売買することを、ヘッジとよびます。逆に日経平均が下がると、証券会社は値下がりによる損を回避するため先物を売ります。問題は、日経平均が上がると先物を買わなくてはならず、逆に日経平均が下がると先物を売らなければいけない、という順張りになっている点です。日経平均が上がれば買うため、さらに日経平均があがり、そのためにさらに先物を買わなければならない、といった循環が発生し、日経平均の上昇を助長します。逆に下落すれば先物を売り、さらに下落するという循環も発生し、下落を助長するのです
 このような実体経済や企業のファンダメンタルとは関係ないテクニカルな要因で、株価の乱高下が助長されていると考えられています。企業の実態価値に投資する我々としては、このような乱高下に振り回されず、冷静に投資行動を行うことを心がけています。

このページのコンテンツは、スパークス・アセット・マネジメント㈱の協力により、転載いたしております。
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