俵のネズミ、米国と中国

風花(2013-003)

俵のネズミ、米国と中国

少しまで、俵のネズミが元気だった。ネズミは、豊富に供給される米ドル、という米(コメ)を食べて、中国などエマージング諸国の景気もいいぞ、とチュウチュウ言っていた。ところが先週バーナンキ議長が、量的緩和を今年チュウに縮小し、来年にはチュウ止する、というスケジュールを明示したため、米を食っていた市場ネズミは泡を食い、そして中国も含めたエマージング諸国株の下落も厳しく、チュウの音もでない状況のようだ。

ただし、米国の量的緩和縮小に対する、市場の懸念は行き過ぎだろう。その理由は3つほどある。

1つ目は、米国景気が堅調だからこそ、量的緩和を縮小すると言っているのであって、景気がどうなろうと縮小する、というわけでは全くないことだ。景気が改善すれば、それに応じて自然な形で緩和を止めて行くのは当たり前だ。

2つ目は、連銀は緩和を続けるが量を縮小すると言っているのであって、緩和をすぐに止めるとか、ましてや金融引き締めに転じる、と言っているわけではない。引き続き、債券を購入して資金を撒き続けるが、撒く量を減らすというだけだ。よくたとえで言われるように、車のアクセルを緩めるだけであってブレーキを踏むわけではないし、風呂に蛇口から注ぎ込む水の量を減らすだけであって、風呂の栓を抜くわけでもない。

3つ目は、そもそもそれほどのカネ余りかどうか怪しいことだ。M2(経済に出回っているお金の量)をベースマネー(中央銀行が撒いたお金の量)で割った比率を見ると、日米共に低下している(図1)。つまり中央銀行が、民間銀行が保有する証券を買い取って、現金を民間銀行に渡しても、まだ資金需要が弱いため、民間銀行から外側に融資などの形でお金が(ある程度は流れ出してはいるが)それほどは流れ出してはいないということだ。つまり、米連銀がお金を撒くほどには、経済全体はカネ余りになっていない。直近の具体的な数字で見ると、マネーの前年比は、米国ではベースマネーは19.2%増えているが、M2は6.9%しか増えていない(共に2013年5月。ちなみに日本では、それぞれ32.0%、3.4%の伸び)。

(図1)
図1

(図2)

こうした事態は、実は連銀は、QE3を開始する前から百も承知だった。連銀幹部は、QE2でいくら国債を買ってもその効果が薄くなっている、と語っていた。QE3が、国債の購入ではなく住宅ローン証券という別の物を買う形になったのは、量的緩和の限界を承知の上の、苦肉の策だったという面がある。

とすると、米国でお金が余って仕方が無い状況になっており、そうしたお金が投資先を求めてエマージング諸国に怒涛のようになだれ込んでいた、したがって、連銀がカネ余りを止めるとエマージング諸国からお金が引き上げる、というシナリオは、怪しいことになる。そもそも、おひざ元の米国株式市場のPERをみても(図2)、極めて落ち着いている。つまり、米国の株価は企業収益の水準に支えられているのであり、カネ余りの影は見出しにくい。

このように、米国カネ余り説は怪しいのだが、そうした説に乗っかって(あるいは当惑されて)動くのもマーケットなので、今は、エマージング諸国から米国に資金が戻る、というストーリーが(間違ってはいるが)心理的に優勢なのだろう。

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