「アジアの未来~6つの提案」

 5月に日経新聞主催の国際交流会議「アジアの未来」が催された。その内容はすでに報道されたが、私が聴いたいくつかのセションを参考にしながら、アジアの見方と日本の行く末を考えてみた。投資家として、という視点を軸にしている。

 日銀の黒田総裁は、自らの45年のキャリアを振り返って、いつもアジアと向き合ってきた。リーマンショック後、アジアは高い成長をキープしたが、中でもアセアンは一段と好調である。アジアの原動力は、①サプライチェーンの高度化、つまりネットワーク化が進んだこと、②域内、域外とのFTA(貿易の自由化)、国別ではアセアンと韓国が先行したこと、③生産の拡大によって所得が増加し、それが外需から内需へシフトさせていることにあると指摘する。これを“ファクトリーアジア(工場としてのアジア)からコンシューマアジア(消費地としてのアジア)への発展”と称している。

 今後30年をみてもアジアは有望である。しかし、アジアの成功が約束されているわけではない。黒田総裁は、タイムリーな政策で、「中所得層のワナ」をいかに脱していくかが、鍵であると強調する。この言葉は、もともと中南米などの資源輸出国について使われた。天然資源で豊かになっても、その後が続かないという意味である。

 アジアの場合は、人的資源の活用である。農村の余剰人口がなくなってくると、それが1つの制約になって、生産拡大が出来なくなり、賃金の上昇が重荷になってくる。この“ルイスの転換点”を超えて成長できるのか。そのためには、どうするかが問われる。日本、香港、シンガポール、韓国、台湾はこれを乗り越えたが、続く国々はどうか。

 アジアに成長のフロンティアはある。黒田総裁は、各国が構造改革に取り組み、イノベーション+ガバナンス+ヒューマンキャピタルの3つの高度化に成功すれば、アジア各国はこのワナを克服できるという。

 世界銀行のスリ・ムルヤニ・インドラワティ専務理事(元インドネシア財務大臣、女性、51歳)は、世銀のテーマである“貧困をなくす”ことを進めるには、中間層を大事にしないといけない、と強調する。

 東アジアの開発では、ミャンマー、ラオス、カンボジアが課題である。アジアが安定していれば、アセアンの一員として離陸することは十分できると見ている。一方、中所得層の国は、教育、技能、金融システムのレベルを上げて、次の高所得国を目指すが、これに成功した例は少ないので、ハードルは高いと指摘する。

 しかし、その中間層は、東アジアで現在1.65億人に増えてきたが、これが2030年には10億人まで増えると想定できる。消費者、生活者としての国民はより良いサービスを求めるので、社会の求心力も変化してくる。政治がその動きにダイナミックに適応できないと、オプトアウト(拒否権)が行使されかねない。国に貢献しない、税を払わないというような風潮が蔓延すれば、発展は阻害される。

 その壁に直面しているのが中国である。中国は30年間成長して、今後、世界最大の市場になっていく。しかし、これまでの成功モデルが限界にきている。都市化の進展、環境の悪化、生産性の向上という点で、次の改革が必要である。スリ専務理事は、人の高付加価値化に向けて、イミテーターではなく、イノベーターが求められる。そのためには社会システムの改革が必要であると指摘する。

 タイのインラック・チナワット首相(45歳)は、アジア発展の舞台は整ってきたようにみえるが課題も大きいという。アジアは多様である。東アジアだけでなく、南アジア、中央アジア、中東も視野に入れて発展を期する必要がある。政治的に上手く連携しないと、すぐに利害の対立も生まれる。

 そこで、今後の発展のために、投資は“連結性の強化”に使うべしと提案する。陸上と海上のインフラをいかに充実していくか。それに発展の基礎がある。陸上では鉄道によるリンクにより現代版シルクロードが実現してほしいと期待する。

 海上の地政学がどうか。2015年にアセアン共同体の構築を仕上げるべく力を入れているが、南シナ海の安全をどうするかは大いなる難問である。問題は中国の国家主義にあると、シンガポールのリー・シェンロン首相はいう。しかし、どこの国も中国と貿易をやっている。その意味では中国の成長が続けられるか。これが重大テーマである。

 アセアンはどうするのか。2015年までにアセアン共同体を完成させる。アセアンの各国はそれぞれで、同じではない。それでも共通のプラットフォームを作ることで世界に影響を与えることができると考えている。アセアンは協力団体であり、パートナーシップで結ばれている。決して他の地域に脅威を与えるものではない、とリー首相は述べる。

 ベトナムのグエン・ティエン・ニャン副首相は、紛争と利害の対立をどう乗り越えるかという点について、連帯と協調が力を生み出すと強調する。そのために、6つの領域でアジアフォーラムを設立しようと提唱する。

 1つは環境汚染、気候変動について、国を超えて協力する。2つは海事サービスの拡大に向けたセキュリティの確保。3つは、持続可能な水源の管理。大河はあるが水は足らない。国ではなく流域全体を管理する必要がある。4つは、サイバーセキュリティへの協力。各国への技術の移転で、情報システムのサステナビリティを確保する。

 5つは、人材の育成と活用。先進国の高度スキルの人材を活かしつつ、教育メカニズムの強化が必要である。一方、途上国からの海外労働協力はもっとあってもよい。6つは、金融市場の透明性の確保。金融市場のリスク評価に当って、十分なデータが各国で揃っていない。データベースの整備が金融システムの安定化に結び付く、と提案する。誠に良い考えである。

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