第10回 ETF投資のまとめ

前回の記事はこちら→パッシブ運用について(→https://money.minkabu.jp/38879)

 これまでのコラムで、株価指数の市場における意義や役割、その統計データの見方を説明してきました。株価指数を知ることによりETFについて一層深く理解できるようになっていれば幸いです。
 株式投資に正解はありません。また、ずっと勝ち続けることもまずないでしょう。であれば、失敗を恐れずに始めてみることでしょう。やはり、実体験に勝るレッスンはありません。
 まったくの初心者が株式投資をする上でもETFが適切なのは、余計な失敗が少ないからです。まず、ETFには個別銘柄リスクがありません。個別企業への投資には様々なリスクがあります。その企業独特の理由で業績が急速に悪化したり、経営者の交代や暴走、欠陥商品のリコールなどの一般的な事業リスクに加え、従業員の不祥事や犯罪関与など、事業リスク以外の評判リスクも様々に存在しています。これらは、いつ何時個別銘柄投資の損失として顕在化するか分かりません。その最たるものが、東日本大震災による原発事故と電力会社への影響でしょう。ディフェンシブ銘柄の最高峰だった電力会社が、原発事故をきっかけに最もリスクの高い銘柄になったわけですから。
 銘柄分散された株価指数に基づくETF投資であれば、このような個別銘柄リスクからは解放されています。日経平均やTOPIXのETFであれば「市場リスク」だけを相手にすることになり、業種別ETFであれば「市場リスク+業種特有のリスク」を相手にすることになります。(個別銘柄投資は、これに加えて個別銘柄リスクを抱えているわけです。)株式投資を始めていきなり個別銘柄リスクに見舞われることがないのがETF、市場全体のリスクだけを案じれば良いのがETFです。
 銘柄分散されている意味では投資信託もETFと同じく有力です。しかし、ETFは投資信託よりもメリットがあります。まず、前回説明した通り、ETFはパッシブ運用ファンドなので低コストです。一方、投資信託の多くはアクティブ運用ファンドなので運用報酬が高いという点でETFと比較して不利です。
 ではETFとパッシブ運用の投資信託ではどうでしょう?一点だけを除くと、機動性とコスト面において、やはりETFに軍配が上がります。まず機動性ですが、以前このコラムで書いた通り、日本の夜中に(欧州危機の解決のような)大きなニュースが飛び込んできた場合、ETFではリアルタイムで取引ができます。仮に日本市場が閉まっていても、アメリカに上場しているMSCIジャパンのETFを売買できます。一方、投資信託の場合は翌朝に発注しても約定するのは夕方になります。
 長期投資家だから、そんな機動性は必要ないという方。ごもっともです。ただ、そのような方にはETFの方がより低コストであることを指摘しましょう。ETFのコスト優位性は次のようなものです。
 投資家が投資信託を解約する場合、販売会社を通じてファンドに対して解約を請求します。ファンドの運用会社はその請求を受けて、現金を払い出すために保有する株式を売却します。(現実には、そのような現金ニーズに備えて常にファンドは現金相当部分を一定程度用意しています。)ファンドが株式を売却する場合、証券会社に売却依頼を出すのでそこで委託手数料がかかります。また、ファンドであっても売却による利益には課税されます。この委託手数料と税金がETFではかなり回避できます。なぜなら、投資家が解約する時は市場でETFを売却するからです。ファンド会社は何もする必要がありません。この分だけ投資信託のパッシブファンドよりもETFが有利なのです。長期投資家であっても、このコスト優位性は無視できないでしょう。実際に米国でも、ETFが普及する前は「短期売買投資家がETF、長期投資家はインデックス・ファンド」と言われていました。しかし、今ではその議論をなくなったようです。それだけETFの優位性が浸透したわけです。
 ただし、ETFにも欠点があります。しかし、これはすべてのETFの欠点と言うわけではありません。その欠点とは流動性です。つまり、市場での売買高です。(ETFの流動性にはいくつかの側面がありますが、ここでは取引所市場での流動性・売買高に限定します。)現在日本に上場しているETFの多くは流動性が乏しいのが実態です。上場本数は100本を超えていますが、実際に様々な投資家の実運用に耐えうるのはごく一部でしょう。ましてや機関投資家にとっては、ほとんどないのが実情だと思います。流動性が乏しいETFの場合、前述したメリットがすべてなくなると言っても過言ではありません。思った時に売り買いができないのであれば「機動性」はありません。また、売買するのに数時間かかり、その間に価格変動が起こるようでは「低コスト」でもありません。低コストとは、市場価格で売買する前提での低コストです。市場価格自体がつかない状況では、売り買い気配の開きだけで大きなコストになります。
 日本でETF投資を浸透させたい関係者にとって、この流動性の低さが最大のネックになっており、悩みの種です。流動性の乏しさが日本でETF普及の障害になっていると言っても過言ではないでしょう。これは「流動性が乏しいから投資家が参入できない」と「投資家が参入しないから流動性が乏しい」という、「鶏が先か、卵が先か」という命題と同じ状況なので、非常に厳しい現実だと思います。
 流動性が豊富(活発に売買されている)な限られたETFの中に日経平均のレバレッジとインバースがあり、筆者はこれをうまく使って株式投資をする個人投資家が増えてもらいたいと思っています。もちろん、その場合、本来のパッシブ運用としての低コストや長期投資という側面を犠牲にしてしまうのですが、それでも、本来のパッシブ運用としてETFをバイ&ホールドするだけに使うのはちょっと勿体ない。個別銘柄投資とETFを組み合わせて、ちょっとしたロング・ショートなどをやってみるのも面白いでしょうし、短期的な売買で遊んでみるのも立派な株式投資です。そういう裾野が広がって初めて、筆者は、投資家の間にパッシブ運用の王道が確立されてくるだろうと思っています。
 ただ、流動性の乏しさは基本的に日本市場の問題でもあります。我々投資家は日本のETF市場が成熟するのを待つ必要はありません。今では海外市場で取引することが比較的容易にできます。もちろん、そのためには外貨を用意したり、通常とは異なる証券口座を設定する、証券会社の手数料も高めなど、諸々な制約はあります。それでもなお、日本でETFの流動性が乏しいと不満を唱えるなら、海外市場に行きましょう。そこには遥かに大きな流動性が存在しています。(念のために言うなら、海外上場ETFの中にもうまくいかないETFはたくさんあり、その一部は償還されて上場廃止にもなります。しかし、日本に比べると多種多様なETFが活発に売買されています。)海外市場には、アクティブ型指数に基づくETFや債券ETF、より多様なレバレッジやインバースETFが上場しており、むしろ選択肢が多過ぎるほどでしょう。そこに参加して、様々なETF利用方法を試してもらいたいと思います。

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