「外人投資家の視点」

 3月に開かれた日本IR学会で、ニッセイ シュローダー アセットマネジメントのCOOでファンドマネージャーである辻本臣哉氏が興味深い報告をした。テーマは、「運用機関のグローバル化と日本企業のIR~ESG開示の現状と今後~」であった。

 1つの論点は、日本企業の存在が相対的に下がっており、その影響が薄くなっているということである。アセットオーナーの動きを見ると、海外年金基金では、日本株とアジア株を分けて考えるのではなく、日本を含むアジア株としてアセットクラスを考える。

 そうすると、それに対応するグローバル運用会社は、日本株の運用チームとアジア株の運用チームを別々ではなく、統合するようになってきた。アジア株運用のヘッドクォーターも日本ではなく香港やシンガポールにおかれるようになる。

 それに伴い、アジア株の中での日本株の数は限られてくる。日本の自動車、エレクトロニクス企業ではなく、アジアの中での有望な自動車、エレクトロ二クス企業となるからである。

 セルサイドの証券会社でも、例えばエコノミストは二人いらない、ストラテジストは二人いらない、アジアをまとめるリーダーは1人でよいということになる。日本を中心にみていたエコノミストやストラテジストは必ずしも必要でなくなってしまう。セクターアナリストも日本が強いインダストリーや企業に今まで以上に限定されて、日本企業のカバレッジは一段と減って行く。

 もう1つは、欧州の年金基金を中心に、ESGを考慮した運用を運用会社に要求するようになっており、日本にもその影響が出始めた、ということである。

 運用会社の通常のセクターアナリストは、大型株を中心に20~30社ほど担当し、今後2~3年の業績予想を行う。投資判断は相対的な割安/割高でみる。問題点としては、短期志向になりがちで、分析力よりも情報力が問われ、相対評価であるからコンセンサスとの違いが重視される。

 一方、ESGに優れていると、企業の長期的な成長性や安定性に結びつく。サステナビリティを、経営スタイルと経営者そのものの資質や実践で評価していく。伝統的アナリストの活動を超えているという言い方もできるが、ESGを独立して狭く捉えるのではなく、企業評価の全体にESGを織り込んでいくという見方の方が妥当であろう。

 運用会社が長期投資の基本としてサステナビリティを重視すれば、アナリストも業績予想を軸にした財務分析だけではなく、ESGを明確に取り込んでいく必要がある。そうすると、上場企業のIRの担当者も、当然CSRの領域を的確に説明していくことが求められる。

 現状では、アナリストも経営者も、このESGの認識に差があると辻本氏は指摘する。それでは、企業のIR担当としてはどのように対応していけばよいのか、いくつかの方策は考えられるが、ここでは外人投資家に、よりアピールする方法について考えたい。

 上場企業3500社のうち、機関投資家が投資対象とする会社は狭くみて600社、広くとって1200社程度である。国内の機関投資家に注目してもらうには、どのようなIRが必要か。リスポンスがはっきりしない個人投資家にはどう説明したらよいのか。さらに、外国人投資家にさほど注目されていない企業において、外人は相手にしなくてよいのだろうか。

 英文資料を用意する必要があり、英語での対応も求められる。辻本氏の話で、もう1つ興味深いのは、アジアのアナリスト、ファンドマネージャーは相対的に若い。日本について特別詳しいわけではない。欧米をみる時と同じような基準で、日本企業をみてくる。その時、日本企業独自の強みをどうアピールしていくのか。これは意外に難しい。

 わが社は内需中心で海外市場は相手にしていない、国内投資家中心で外人投資家対応は必要ない、という企業は少ないと思う。問題は、外人対応への労力をかけても。それが効果をもつのかという点である。①多様な外国人とIRのコミュニケーションをもつ、②トップマネジメント自らそれを実践する、③IRセクションはそのための資料やツールを用意していく、ということが不可欠であるが、中小型の企業にとってハードルは高い。

 しかし、外人投資家は国内よりもはるかに多様である。やってみると意外な効果がある。予想以上に反応がよい場合もあり、逆に全く通用しないこともある。ここからが大事で、理解を深めてもらうにはどうするか。はっきり意見をいう投資家の声に、トップ自ら耳を傾けることはよい刺激になる。

 不愉快だ、もう会いたくないという社長がいるかもしれないが、ネガティブに考えないでほしい。IRは会社の営業である。営業がうまくいかないからといって、客を見限っても仕方がない。アベノミクスで日本マーケットの注目度は上がっている。この機会に、何としても成果を上げるべくターゲットを定め、会社に経営革新を起こす1つの起爆剤にしたいものである。

日本ベル投資研究所の過去レポートはこちらから

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