賃金水準の動向

 最近、賃金の動向に関する議論を見聞きする機会が増えているように思います。国内においては、2%の消費者物価上昇率を目標とする政府・日銀の共同声明が発表される中、物価上昇と賃金の動向に関心が高まっています。また、インドネシアやタイ、ブラジルといった新興国においては、最低賃金の引上げ等により人件費が上昇しており、製造業のコストアップが懸念される一方、現地の消費拡大を期待する見方もあるようです。ここでは、東アジア及び東南アジアにおける賃金の行方について、生産年齢人口の視点から考えてみたいと思います。特にこの地域を取り上げるのは、①地理的に近く日本への影響が大きい、②豊富かつ低廉な労働力を背景に世界の工場として過去数十年における経済のグローバリゼーションのけん引役の一つとなった、と考えているからです。
 まず、下のチャートをご覧ください。

 これは、国連の推計・予測に基づく、東アジアと東南アジア[1]における、5年毎の生産年齢人口(15歳から64歳の男女)の増加数と増加率の推移を示しています。生産年齢人口は、2010年までは5年毎に8千万人を超える増加が続いてきていました。しかし、2015年以降は、中国での減少を主因として増加数が大きく落ち込んでいく予測となっています。また、増加率においては、2006-2010年から既に低下傾向にあることが見て取れます。

 近年、中国での人件費上昇もあり、東南アジア地域への生産拠点のシフトが活発化しています。しかし、東アジアと東南アジアを合わせて見ると、労働力の確保は今後困難さを増す方向にあるように思われます。現在起こっている人件費の上昇は、短期的事象ではなく、中期的な課題となり得るという見方も出来ると考えます。

[1]東アジア: 中国、香港、マカオ、北朝鮮、モンゴル、韓国、他
東南アジア: ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、東ティモール、ベトナム

 次に、参考までに、日本における生産年齢人口の推移を見てみます。

 日本で生産年齢人口の増加数及び増加率が低下し始めたのは、1960年代後半になります。日本ではこの頃に余剰労働力がなくなったと言われており、労働運動の活発化等もあって、実質賃金の上昇圧力が高まったようです。現在のアジア新興国も類似した状況にあるのかもしれません。

 では、このようなアジア新興国における賃金上昇はどのような影響を及ぼすのでしょうか?残念ながら影響が広範・複雑であり、予測を立てるのは非常に困難です。ただ、明らかなのは、過去数十年かけて世界の工場となった地域の代替は、数年の単位では見つけられないということです。従って、アジア新興国の人件費上昇による製造コスト[2] の上昇分は、何らかの形で吸収されることになります(例えば、企業による生産性改善の加速や値上げ努力(これらが十分でなければ企業収益は悪化)、最終消費者の購買行動の変化、為替・金利の変動等が考えられます)。これらは、相互に影響しあいながら時間をかけて社会に多様な変化をもたらしていくと考えられ、株式投資をする上で、今後中長期にわたる重要なテーマになってくるように思われます。

[2] JETROの”在アジア・オセアニア日系企業活動実態調査(2012年度調査)”によれば、ASEAN進出日系企業の現地での製造原価の構成は人件費16.8%、材料費62.8%、その他20.5%。ただし、材料費の原価にも現地人件費が含まれており、賃金上昇の影響は前述人件費分よりも大きいものと考えられます。

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