調整を繰り返しながら育つ金価格

QE3だけでは抜けない1800ドル

 金市場(ドル建て価格、以下同じ)にとって高値更新への必要条件といえるQE3(量的緩和策第3弾)が発動されて早くも2ヵ月になろうとしている。
 発表当日の9月13日に前日比38.4ドル高と半年ぶりの1770ドル台に水準を切り上げた金価格(NYコメックス・中心限月)は、その後1ヵ月にわたりこの水準を維持しながら推移した。
 一般的には、2011年秋から注目されてきた政策の発動ゆえに相場格言に照らせば「噂で買って事実で売る」ということで“材料出尽くし”あるいは“材料に一巡感”が出て、相場展開の上では調整局面ということだが、実情は価格面では高値保(も)ち合いが続いた。10月以降はさすがに調整局面入りし、11月2日に米労働省による10月の雇用統計の発表に際しては、非農業部門の雇用増が市場予想の12万人台を大きく上回る17万1000人となったことを受けて、1670ドル台へと急落して取引を終えた。雇用市場は景気回復への要となるが、その予想以上の改善は、米FRB(連邦準備理事会)の取ってきた超緩和策の終息時期を早めるとの見方が台頭することによる。
 結局QE3 の発動だけでは1800ドルの大台の回復、あるいは2011年11月8日の1804.4ドルという戻り高値更新には至らなかった。金にとって今後の価格展開を考える上では、2011年9月以降の調整局面の中での高値となるこの水準を突破することが、テクニカル上の大きな意味を持つことになる。そして突破には追加の材料が必要になる。その前に、まずここまでの価格展開を点検しよう。

適正価格を見出しにくい金

 2011年9月以降の最高値更新以来、調整局面入りした金市場。ここまで1年余りの方向感のない相場展開は、2001年に上昇相場が始まって12年目にして初めてやってきた目立った調整局面という位置付けとなる。
 それはこれからの金価格の展開にとってむしろ必要なものだった。なぜなら投機的人気が一巡し、その後の失望の時間帯をどの水準で乗り切るかという事実の積み重ねが金相場には必要だからだ。“自然体でどの程度の水準を維持できるかという事実の積み重ね”と表現した方がわかりやすいかもしれない。
 というのも金には妥当価格はなく、株式のようにPER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)などというモノサシはなく、果たして現時点の価格が適正であるのか否かという判断が付きにくいという難点がある。
 そもそも実物資産のなかでも不動産のように収益を上げることもないという点でも金は特異な存在といえる。したがって、現状の需給関係の中で自然体で維持できる価格帯が、市場が受け入れた価格という評価になっている。様々な思惑という形で金価格に乗っている金融政治上のプレミアムの多くが剥がれた状態が、その時点での適正価格と見なすならば、それは調整局面を経る中で示されることになる。

立ち位置を確認する機会となった1年間の調整局面

 その点で、過去1年の中で何度か繰り返された1500ドル台前半への下げと、そこからの反転上昇がポイントになると見ている。特に今年の5月中旬から2週間にわたりこの水準を崩そうとの一部のファンドによる試みが見られ、それが失敗に終わったことは大きかった。下値を割らなかったこと自体が、市場参加者に安心感を与え、その後の反転につながることになった。
 すなわちこの1520~1530ドルが現在の環境下での下値支持線とのコンセンサスが市場に生まれた。さらには、当時の取引の中心的価格帯が1600ドル前後なので、ここを起点にした相場が次の展開ということになると見ている。
 この話は結果論ではなく、当時の市場のセンチメントを含めた内部要因を元にした分析である。
 相場展開が、こうしたセンチメントに左右される要素が他資産に比べ大きいのも金の特徴といえる。

膨らまざるを得ない米財政赤字

 さて以上のような分析に立つと足元の金市場は、FRBによるQE 3を受けた上昇相場の最初の調整局面と位置付けられる。この先を見通す上でポイントになりそうなものは多い。目先には今週の米国大統領選挙がある。各国の事情もあり対処療法に始終しがちなユーロ圏危機も、いまだ先が見えず波乱は繰り返されそうだ。
 その中で金市場にとってインパクトのあるものは、やはり米国の財政問題だろう。昨年の米国債の格下げの材料になった連邦債務上限引き上げ問題は、遅くとも来年初めには俎上に上ることになる。昨年8月に2兆1000億ドル引き上げた国債の新規発行枠はすでに年始1月には使い切ると見られる。
 その前に「財政の崖」問題が立ちはだかる。内容はメディアに詳しいので重複は避けるが、問題自体は2012年年初から指摘されていたものだ。いま米国経済はヨロヨロとした成長を続けている。それは開放的な財政と金融政策によりもたらされている。つまり政権政党が変わってもサポートは外せず、緊縮策の実行も難しい。結果的に財政赤字は膨らまざるを得ず、それが金価格を刺激しそうだ。そうしたタイミングは、足元の調整局面を抜け出した年末から2013年年始となりそうだ。

◆関連サイト
亀井幸一郎のブログ
住友の金(SUMITOMO GOLD)
JGMA(社団法人 日本金地金流通協会


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