「企業価値評価の4つの軸」

 企業を評価する軸について、成長性と持続性を分けて、ここでは企業価値を定性的に判断する4つの軸を考えてみる。ベンチャー型の企業には3つの軸でよいと考えているが、企業が成長してくると、成長性と持続性を分けて考えた方がよい。そこで、マネジメント、イノベーション、リスク、ソーシャルの4つの分けて考えると、企業がよく見えてくる。

 第1は経営者の経営力である。これを3つの要素から評価したい。①は、経営理念やビジョンを明確にして、それが共有できているか、という点である。②は、経営戦略の立て方からみて、その戦略構築力は十分か。そして、③は、将来の目標へのコミットメントと、それを遂行するリーダーシップを十分発揮しているか、という点である。

 第2の軸は、企業の成長力である。ここでの3つ要素とは、①として、中期経営計画の中身とその進捗度が適切であるかどうかである。②は、ビジネスモデルの頑健性(ロブストネス)である。企業価値創造の今の仕組みが、多少の経営環境の変化にびくともしない強さを持っているかをみていく。③は、イノベーションへの挑戦である。今の強さを持続し、次の成長機会を手に入れるためにどのようなイノベーション(仕組み革新)に取り組んでいるかを評価する。

 第3は、業績変動のリスクである。その要素として、①は、歴史的にみて現在の業績水準はどのような局面にあるのかを判断する。また、ROEの水準もどのレベルにあるかをよく知っておく。②は、業績変動の要因である。通常の利益変動要因のほかに、予想外のことが起きた時にどのように対応するのか。その手立てと影響の度合いについても評価したい。③は、中期業績の方向性とその達成についての蓋然性(確からしさ)である。確からしさが高いとすればどうしてか、かなり低いとすればどこに課題があるのか、を知っておきたい。

 第4は、ソーシャルである。これはサステナビリティを支えるESGで、①コーポレート・ガバナンスの実効性、②人権などの社会性の確保、③環境など地球的課題への解決策があげられる。

 投資家は、こうした4つの要素を、まずは分る範囲で確認する。次にすぐには分らないとすれば、どのような点がはっきりしないかを明らかにする。そうすると、投資家やアナリストは、この点について会社側に聞いてくる。経営者に直接会って、それを知ろうとする。事業担当の責任者に会って公表されたベースで、内容を理解しようとする。あるいは、IRの担当者に事実の確認や将来の見直しに関する材料を聞いてくる。

 経営者の経営力、企業の持っている事業の成長力、そして企業の中長期業績の変動リスクの程度、企業のサステナビリティについては簡単には分らない場合も多いが、投資家はそれを知りたい。将来に関わることについては、IRの担当者にとっても明確な答えがないかもしれない。しかし、投資家は会社の未公開情報や秘密を知りたいわけではない。将来を判断する材料、ヒントを公開情報の中から得て、それをもって自分なりのシナリオを描いていく。

 例えば、今のパナソニック、シャープをどう見るか、再生したJALをどう判断するか、世界トップの座にあるブリヂストンの強さはどこにあるのか、商社の収益力の高さは資源に投資したからなのだろうかなど、新しい視点から企業の実態が見えてくる可能性がある。
4つの軸をベースに、大いに企業をみる目を磨いていきたいと思う。

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