「不確実下の企業経営をみる」

 国際法律事務所のホーガン・ロヴェルズと英国の金融紙FT(フィナンシャルタイムス)が、企業経営者に調査を行った。グローバル企業はいかにリスクを切り抜けるか、というテーマについてサーベイをした。企業の成長戦略を評価するために、英、欧州大陸、米、アジアの4地域のシニアマネジメント160名に聞いたものである。2012年のこのレポートを読み、責任者の話を聞きと、いくつかの視点が参考になる。

 世界の経済、政治は不確実さ(uncertainty)を増しているが、その中で、主要企業の経営者は楽観的であり、戦略的志を大いに有している、という。実際には、不確実さによって、目指すべきものが阻まれることは十分想定されるが、彼らはその不確実性を組み込んで長期戦略を立てている、という。本当に不確実さをリスクとして捉え、効果的にコントロールできるならば、そこから利益を得ることは可能であろう。

 レポートの中で、成功のための5つの条件を挙げている。そのステップとは、①自社が精通している分野に専念する、②最悪の事態に備える、③現地、現場に目を凝らす、④社内の組織体制を整える、⑤‘キャッシュ イズ キング ’という認識の下、バランスシートを健全に保つ、という点にある。このような対応が、各企業からにじみ出ているという。

 経済の先行きが明るくないのに、企業のマネジメントは意気消沈しておらず、慎重ながらも将来について楽観的である、という指摘がおもしろい。自社の内部成長に主軸をおきながらも、M&Aを狙っている。2012年のM&Aは、2004年以来の低い水準になろうが、そうした環境だから、比較的安い価格で企業を買収できるチャンスと見ている。

 自社が精通している分野については、既存市場ではM&Aを考え、新たな地理的市場の拡大を狙い、長期的な戦略的パートナーを求めている。アジアでは、近隣国への市場拡大を目指して、企業の直接投資が急速に増加している。アセアン10カ国によって、2015年までに設立される共同市場から創出される機会が注目されている。

 最悪の事態の備えるという点では、ユーロ圏の経済危機が、自社にとって大打撃にならないように、十分克服していけるという。実際、4割のシニアマネジメントは、ユーロ危機は自社の成長戦略にとって大きな影響はないとみている。一方、中国に最も批判的なのはアジア企業であり、5割強のマネジメントが最も困難な市場であるとみている。

 現地、現場に目を向けるという点では、保護主義、労働規制、金融規制などについて、十分事情を理解しておく必要があるという。社内体制を整えるという点では、優秀な人材の維持確保、効果的な技術開発と活用、バランスジートの健全性の確保に力を入れている。

 キャッシュ イズ キング という点では、潤沢な現金が必ずしも必須の条件ではないが、借入金の調達が厳しいという認識の現れである。また、その余裕資金をすぐに使わなければならないという圧力を、株主からはさほど感じていないともいう。

 不確実下の企業経営は、最悪の事態を想定し、その時の損失を最小にするように行動することである。しかし、縮こまっているだけでは停滞し、活力を失ってしまう。不確実性を見据えて、それをリスクとして捉えられるように、準備することである。リスキー下の意思決定であれば、多くの経営者の得意としていることであろう。不確実さを組み込んで、どこまで長期戦略を立てられるのか、そこを見極めていきたいと思う。

 上記の5つのステップについて、日本の上場企業の経営者にも改めて聞いてみたい。企業評価の視点として、活用することができよう。

(出所)Evolution : Profiting from Uncertainty, FT insight, Hogan Lovells, 2012

日本ベル投資研究所の過去レポートはこちらから

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