~今後のインターネットビジネス:成長のコンセプト~
2001年に売上高86M$(約70億円)、利益10M$(約8億円)であったGoogleの2010年の売上高は29,321M$(2.3兆円)、利益10,796M$(約8300億円)。10年で売上は340倍、利益は1,000倍に成長した。当然、この歴史上まれに見る急成長企業に匹敵するような企業を見つけることは困難だろう。それでは、技術やサービスの革新の速い世界で成長を続けるために、当面重要になるコンセプトや課題は何だろうか。
2009年当時、シリコンバレーのベンチャーキャピタリストは「モバイル」、「ソーシャル」、「リアルタイム」の3つのコンセプトをゴールデントライアングルと呼んでいたことを思い出す。これらのコンセプトの重要性は未だに色あせないばかりか、重要性を増している。
「モバイル」とは、世界が本格的なモバイルインターネットの時代に突入することを指すものである。2009年当時iPhoneの爆発的な普及をきっかけに広がったモバイルユーザーは、その後スマートフォンやタブレット型端末の普及により更に増加し、ビジネスパーソンの働き方すら変えつつある。
「ソーシャル」とはユーザー参加型のインターネットの世界の圧倒的な広がりを指す。 “Web2.0”以降、順調に拡大を続けているソーシャルウェブの世界はその勢いを増している。特に最近のFacebookは、驚くべきスピードで拡大を続けており、全世界で5億人を超えるユーザーの間で、20分間で約200万件の「友達リクエスト」が承認されているといわれる。こうした人と人との結びつきは、それまで存在しなかった情報を生み出しており、今後ソーシャルコマースのような分野は新たなビジネスチャンスとなるだろう。Facebook内に自らのウェブサイトを構築する企業も増加しており、あたかも二つ目のインターネットが生まれたかのようだ。
「リアルタイム」は、主に「リアルタイム検索」を指すコンセプトである。2009年にMicrosoftとGoogleは相次いでTwitterとの提携を発表し、それぞれの検索結果に最新のtweetsが含まれるようになったが、Twitterというプラットフォームを実験台としてリアルタイム検索技術は進化しつつある。Googleのリアルタイム検索は既に多くのユーザーに活用されており、その精度も格段の進歩を遂げている。そもそも「モバイル」デバイスから情報発信を行うユーザーが増加する場合、その検索結果にも即時性が求められるのは当然とも考えられる。
そして、これら3つのコンセプトに追加しなければならないのは「グローバル」であろう。この2年で更に変化したのは新興国でのICT分野でのビジネスチャンスの拡大であり、製造業だけでなく、インターネットビジネスもグローバル展開を視野にいれる必要があろう。急拡大しているモバイルデバイス向けのアプリのマーケットを活用すれば、開発後即座に全世界でアプリを販売することが可能であり、国内ベンチャーも海外企業を買収や海外での人材確保などグローバルなビジネスを考えた事業展開を始めている。
日本の携帯電話ビジネスは「ガラパゴス」ともいわれてきたが、日本がモバイル先進国であることは世界が認めるところだろう。こうしたことを考えると、これまで培った技術やサービスのノウハウを日本企業は世界市場で大いに生かす機会が広がりつつあるのではないか。
無論、これらのコンセプトはそれぞれ独立しているわけではなく、今後インターネットビジネスには、全てを踏まえた事業展開が求められるだろう。そして、投資家が将来の急成長企業を見つける際にも、こうした観点から企業を検討すると新たな側面がみえるのではないだろうか。
SBI大学院大学教授 湯川抗
このレポートは2011年8月25日に配信したものです。