価格競争に対する経営者の本音

 今回の「まいこ話」では、業界大手が価格競争をすることについて考えてみたいと思います。先日、企業向けの消耗品を販売する最大手企業の経営者にお会いしました。この企業は当該市場を作り上げてきたと言っても良いくらいの実績をもつ企業です。(この最大手企業をA社と呼びます)。当然、A社は先行者利益を享受してきました。企業向け消耗品販売市場を作り上げた実績と信頼によってA社のブランドは非常に強いものです。しかし、市場が拡大するに従い、他社も参入を果たし、現在では上位2社が熾烈なシェア争いをしています。(ここで市場2位の企業をB社と呼びます。)結果、株式市場からのA社に対する評価はかつてほど高くなく、どちらかといえば株式市場から無視されているといっても良い水準になってしまいました。A社とB社で過当な価格競争が続くことが懸念され、誰も利益が出せなくなることを恐れているのです。

 B社の社長はA社に対して敵対意識を剥き出しにしています。B社の社長曰く「A社が価格を引き下げるなら当社も徹底的に対抗する」と。A社も負けていません。「当社から価格を引き下げたことはない。B社が価格競争を仕掛けている。業界最大手として、当社も負けるわけにはいかない。B社の価格には絶対対抗する。」と。たしかにこれだけを見れば激しい価格競争が行われていることが伺えます。両社の社長のコメントを聞く限り、相手企業が降参するまで、価格低下が進んでいくような気さえします。

 しかし、私には上記の社長達の本音は逆なのではないかと思えます。「他社の価格に徹底抗戦」という言葉は、私たちの日常生活でもよく目にする光景です。家電量販店に行けば、ヤマダ電機やビックカメラなどは、店頭、チラシなどで大々的に「他社より1円でも高ければ当社価格を引き下げます」と、書いています。では、ヤマダ電機やビックカメラは利益が出なくなったのかと言えば、そうではありません。

 価格戦略では、圧倒的な上位企業に下位企業が挑む場合は、低価格をつけることで上手くいくことがあります。例えば、大昔のペプシコーラがコカコーラに立ち向かった際や、少し前のソフトバンクのNTTドコモに対する低価格戦略が当てはまります。一方、大手企業が低価格を取る場合には、下位企業を引き離す意図で行われる場合が多く、大手企業同士が価格競争をすると消耗戦になる可能性が高いのです。

 私は、上位企業がお互いに「ライバル社の価格へ徹底的に対抗する」という言葉の真意は、ライバル社に「価格を引き下げないで欲しい」とお願いしていると思っています。冒頭のA社の社長の「B社が価格を引き下げるなら当社も徹底的に対抗する」と言うのは「B社さん、もし価格を引き下げてお客さんを増やそうとしても、当社もその価格まで引き下げますから、当初の目論見通りにはなりませんよ。だから、価格で勝負しあうのは無意味ですよ」と言っているのと同じだと思うのです。

 もちろん、B社の社長の本当の気持ちはわかりません。「A社を抜いてシェア1位を目指す」位の闘志に燃えているのかもしれません。ただ、私はファンドマネージャーとして、多くの経営者にお会いしますが、どなたも熱い闘志の裏に、冷静沈着で合理的な計算を持っているということを感じます。経営者が発する言葉は、誰に向けて発しているかで、そのままの意味で受け止めるべきか、逆の真意があるのか、などを考えながら、その企業の将来をイメージしています。

※当コラムに掲載された企業は、あくまでも当コラムの内容の理解を深めて頂くためのご参考として掲載したものであり、個別企業を推奨しているものではありません。

このページのコンテンツは、スパークス・アセット・マネジメント㈱の協力により、転載いたしております。
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