☆ビジネス・レポート第三十号☆

~いまどきの超低金利時代にそぐわなくなった『法定金利』~

お金(マネー)は年数の経過とともに利子を生みながら増殖するもの、と言ってよいだろう。なぜなら、人は誰しも、お金を持っていれば寝かさずに運用を考えるものだからである。この利子は通常、年利として表現され、それが「金利」であるが、デフレ下で超金融緩和策が続く現在、史上最低水準の超低金利が続いている。そうした中で、その異常な高さが際立ってきたのが「法定金利」である。以下に紹介する2つの最高裁の判決がそれを示している。
一つ目が、去る2月18日に判決の出た消費者金融大手の「武富士」(会社更生手続き中)創業家の長男に対する贈与税課税をめぐる税務訴訟である。本訴訟で最高裁は、「贈与された時点での長男の住所は香港であり、日本への納税義務はなかった」、として、約1300億円の課税処分を取り消す判決を言い渡した。本訴訟は、海外居住者の海外資産贈与を非課税としていた税法の旧規程に照らして、長男の住所を香港と日本のどちらと認定するかが争われたものであるが、最高裁は「住所は客観的な事実に基づき判断すべきもの」として、「住所は日本」とする国税当局の判断を退けた。本判決に対しては、「今回のようなミエミエの課税逃れに対しては、特別な事情を認めても良かったのではないか」、との識者の意見も報じられており、社会通念から言っても釈然としない判決と言わざるを得ない。そして、この判決からはあと一点、釈然としない結果が生まれることとなった。それは、敗訴した国税当局側から原告側(長男側)に対して、利息に相当する「還付加算金」が払われることになるが、その額だけでも約400億円にものぼる点である。ではなぜ、このような巨額に達するか。それは、国税通則法(第58条)が定める法定利息(金利)が今の超低金利の時代には全く、そぐわなくなった高金利(年利7.3%)だからである。
二つ目が、法定金利そのものが争点となった2005年6月の最高裁の判決である。この裁判は、交通事故の加害者側が遺族側(被害者側)に支払うべき損害賠償額(生きていたら稼いだはずの将来の収入の現在価値)を計算するにあたり、いかなる「割引き金利」を適用するかを巡って争われたものであるが、加害者側の主張は、「割引き金利は、民事法定利率の5%(民法第404条)によるべきである」、とするものであった。それに対して、遺族側は「民法の規定する法定利率の5%は今日の低金利時代には全く、そぐわないものであり、現在の金利状況に即して、より低い割引き金利を適用すべきである」、との主張であった。これに関する最高裁の判決は、加害者側の主張する「法定年利5%」を支持した。その理由は、①「被害者の将来の収入(逸失利益)を現在価値に換算するにあたり、法的安定、及び統一的処理が必要であること」、②「このような統一的な処理により、事案ごとにまた裁判官ごとに判断が区々に分かれることを防ぎ、被害者相互間の公平の確保、被害賠償額の予測可能性による紛争の予防も図ることができること」、の二つであった。確かにこの判決が言うように、法的安定性の見地からは法定金利で計算するしか方法がないのかもしれない。それでも、この判決も、誰が見ても釈然としないものであった言うほかはない。
上記の2つの最高裁判決に共通して表れている問題は、法定金利が今の超低金利の現状に全く即さない、非常に高い固定金利であることである。仮に、法定金利が現在の超低金利を反映したものであれば、「武富士」の事案では、国が創業家長男に支払うべき還付加算金はずっと小さいものとなるだろうし、交通事故をめぐる事案では、被害者側が受け取る損害賠償額はもっと大きくなったはずである。
ただ、非常に幸いなことに、民事法定利率に関しては現在、法務省(法制審議会民法部会)において、今の固定金利(5%)から変動金利に変更することを視野に入れた民法改正を検討中、と報じられている。民法に限らず、法定金利の全体に関し、早急にこの方向での法改正を実現すべきもの、と言えよう。


SBI大学院大学教授 野間修

 
*このレポートは2011年3月15日に配信したものです。

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