企業の時間軸

 先日、日立製作所(以下、同社)主催の『日立イノベーションフォーラム2012』に参加する機会を得ました。同フォーラムは、同社の顧客をはじめとした裾野の広い参加者を対象としたイベントで、複数のセッションから構成され、2日間にわたって開催されました。
 同フォーラムは、長くても3年程度の企業業績や当面の株価動向に目が行きがちな私にとって、事業会社が中長期の時間軸で何を考え、何を提供しようとしているのかを深く理解する上で有意義なイベントであったと考えています。
 本稿では、複数参加したセッションの中で印象深かった同社の『スマートシティ』に対する取り組みを取り上げ、最近乖離が大きいように思われる株価と企業の『時間軸』の違いについてお話したいと思います。
 最近、『スマートシティ』という言葉がメディアに登場する機会が増えました。しかしながら、言葉が世に出まわってから日が浅いうえに内容が幅広なため、明確な定義を正確かつ端的に述べることは難しい状態にあります。よって、本稿では「将来都市のイメージの一つ」として話を進めることにします。
 普段私達が数十年後の世界を想像する時、空を飛ぶ乗り物や宇宙旅行が一般的になっている世の中をイメージすることが多いと思います。これらは、実現する時期を正確に言い当てることは難しいものの、現状の技術が進化すればいずれ訪れる近未来都市の姿として、ある程度は的を射たものと思われます。
 しかし、こうした『近未来都市の想像図』には、そこに生きる人々の生活に関連した問題点に対する解が明示されていません。技術が現状の延長線上に発展的に予想される一方、世の中の国々が直面する問題点は、早期に解を示さないと、ますます解決が困難になります。
 世の中の国々が直面する問題点として、(1)超高齢化社会、(2)環境配慮、(3)都市過密、の3つが意識されています。そして、我が国日本は、他国に先んじてこれらの問題に対処することが急務となっています。
 同社は、将来都市生活の洞察にあたり、「望ましい社会とは何か」「どのような経験価値を提供したいのか」を念頭に、『きざし手法』を用いています。
 『きざし手法』では、未来を洞察するにあたり、2005年から2030年までの時間軸と、PEST(P=政治、E=経済、S=社会、T=技術)の4視点で考え、考察を進めています。ひとつひとつの項目は、現時点で既に意識されているものをより深く考えたものや、今後起こりえるであろう変化を捉えたものまで多岐にわたっています。同社は、これらを踏まえ、『誰もが快活に生活できる社会』を提案しようと試みています。『きざし手法』の詳細については同社のWebサイト(http://www.hitachi.co.jp/design/25future/index.html)でご覧になることができます。
 これまでの社会生活において利用できる技術やサービスやインフラは、社会を構成する人間が望んだものが提供されているというよりも、それらを提供する企業や政府の意向による部分が多いように思われます。もちろん、技術やサービスやインフラは、今日明日に考えてどうなるものではなく、中長期の計画に基づいて研究開発が行われ、最終的に社会へ提供されるという性質上、ある程度は仕方がないことではあります。しかし、時にそれらはお仕着せなものであり、実質的に我々は限られた選択肢の中で物事を決定しているとも考えられます。
 これからは、同社が示すように、企業にしても政府にしても、今まで以上に人間の価値観に配慮した意思決定が重要性を増すと見られます。例えば、『環境意識』は、この数十年で大きく高まり、これらに合致したサービスを提供出来る会社が評価されました。これと同じような変化が今後『所有の意識』や『人間関係に対する価値観』などに起き得る可能性は、十分にあります。
 そして、これらは、正確に読み解けば事業機会になり得る一方、取り扱いを誤れば商機を逃すことにもなりかねません。
 最近、欧州由来の金融危機懸念から、株式をはじめとしたリスク資産に対する価格決定のメカニズムが歪められている印象があります。中には、利益の絶対額は数十年前より格段に増加したにも拘らず、上場来の安値を下回る企業が複数存在します。そうした相場環境下にあって、同社の中期的な取り組みをじっくり聞く機会を得た私は、株式市場と事業会社の『時間軸』に大きな隔たりがあることを強く実感しました。
 確かに、2030年と言われると、投資家にとっては途方も無い遠い将来のように感じられます。
 しかし、企業にとっては、活動を永続的なものとするためには、それほど長い時間軸ではありません。また、株価が下がったからといって、企業が研究開発を中断したり、上述したような中長期の取り組みを突然止めることは、まず有り得ません。
 企業の財務体質を改善し、業績を回復軌道に回帰させることに数年要することを考えると、欧州の債務危機も同等かそれ以上の時間がかかると見られます。そのため、企業が本来実現しうる価値と市場の価格の差が著しく乖離する状態は、当面続くかも知れません。その間、目先の株価を追いかけがちな株式市場と、中期的なビジョンを持って将来への種まきを続ける企業の『時間軸』の違いに投資機会を見出すことは、一つの有効なアプローチであると考えます。
 
 
※当コラムに掲載された企業は、あくまでも当コラムの内容の理解を深めて頂くための
ご参考として掲載したものであり、個別企業を推奨しているものではありません。

このページのコンテンツは、スパークス・アセット・マネジメント㈱の協力により、転載いたしております。
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