中国論のダブルスタンダード
中国の産業経済の発展は、諸外国からの直接投資に負うところが大きい。これは通説である。また、輸出の担い手としても、外資系企業は大きな存在である(中国の輸出のかなりの部分を担っているが、生産の一部が輸出に回されているだけである)。ところで、GMも、トヨタも、国内市場を狙って中国進出したのであって、輸出志向ではない。直接投資の目的は、多くのアンケート調査も同じである。内需を狙った進出が多い。皆それを知っている。しかるに、何故、中国は”外向型“経済だと言うのか。こうした中国論はダブルスタンダードであって、感心しない。
そもそも、中国のような大国(人口・国土)が、貿易依存度が普通より大きいということはないのではないか。表2に見るように、香港やシンガポールは著しく貿易依存度が高い。都市国家的な成り立ちであり、農業がなく、製造業も小さい。金融業や観光などサービス産業で外貨を稼ぎ、食糧などの財貨を輸入に依存しているからだ。小国であり、かつ比較優位産業に特化した国は貿易依存度が大きい。
これに対し、中国のような大きな国では、そのような経済循環はありえない。農業も、製造業も、サービス業も国内に成立する。ましてや中国の場合、国土が広く、各地域の条件が異なり、発展段階が異なっているので、一国内で雁行形態的発展が観察できる。沿海部で賃金が上昇すれば、沿海部の産業は高付加価値型に移行し、労働集約型は内陸部にシフトしていく。一国内に、労働集約型も、資本・技術集約型も内包している。かつて、篠原三代平教授が高度成長期の日本経済を観察して「フルセット型産業構造」と呼んだ状況が、いまの中国の産業構造である。
フルセット型では、貿易依存度の高さには限界がある。比較優位に特化した小国の場合、貿易依存度が著しく高くなるのは当然であるが、中国のような大国で、かつ現状程度の発展段階の国で、貿易依存度が60%、70%というのは実態として考えにくい。”外向型“ではないと考えるのが、エコノミストの直感ではないのか。
今回の世界同時不況の初期、今年二月初め頃までは、”外向型“と規定して中国危機説が大勢であった。しかし、GDPや鉱工業生産の落ち込みが世界で一番大きいのは日本であることが分かって(表3参照)、中国”外向型“論は今のところ影を潜めている。中国論は経済分析に拠らない評論が多すぎる。









