株主優待株の落とし穴

┃はじめに

3月期決算企業の株主総会も、本日、6月29日の開催集中日でほぼ終わり、株主優待の商品が送られてくる時期になりました。
ヤフーファイナンスで銘柄を検索すると、社名の後に株主優待のあり、なしが表示される事に象徴される様に、個人投資家にとって、今や株式投資と株主優待は切っても切れない関係になっていますが、株主優待目当ての投資にはリスクも伴います。特に、優待目当てに投資をして、損をしてしまうというのでは元も子もありません。今回は、この『株主優待目当ての投資のリスク』について解説してみます。

┃株主優待の本来の目的とは

今や、業種を問わず様々な企業が株主優待制度を設けていますが、元々の株主優待の目的は、主に消費者向けの商品・サービスを提供している企業が、自社の商品・サービスを株主に利用して貰い、自社に対する理解を深めてもらう事にあったと筆者は考えています。

カゴメやキューピーの様な食品、アサヒビール、キリンHD、伊藤園の様な飲料、東宝、東映の様な映画興業、JRや私鉄各社、ANAの様な運輸、百貨店・スーパー各社などは、本業で提供している商品・サービスを株主優待として株主に提供しており、本来の目的に沿った株主優待制度と言えるでしょう。

また、これらの優待の場合、企業側が負担するのは商品・サービスの原価部分だけなので、株主が受取る優待の商品価値が仮に3000円であっても、それに対する企業の負担は500円、というケースもある訳で、費用対効果の大きな株主優待であると言えるでしょう。ただし、株主が優待の商品・サービスをネットオークションで売りに出す様な場合は、企業にとっては売上の機会損失になりますので、コストは原価部分だけ、とは一概に言えなくなってしまいます。

┃本来の目的から外れた株主優待

それに対して、最近よく見かけるのは、ギフト券やQUOカードといった自社の事業とは全く関係の無い物を株主優待の商品にしている企業です。優待メニューに、社会貢献としてどこかに寄付をする、などというのも最近はありますが、これも同様ですし、米5kgを送る、といったものもそうです。木徳神糧の様な米穀卸の会社の優待ならまだ分かりますが、本業と全く無関係なのに米を株主優待として送る、というのも変な話です。

本業と全く関係の無い株主優待制度は、お中元やお歳暮の様な存在だと言えるでしょう。この様な株主優待の場合、外部から商品・サービスを購入して株主に配る訳ですから、企業にとって、ダイレクトにコストとして響いてきます。

また、単元株式以上を保有している株主全てに一律に優待商品を配る様な株主優待制度も多く存在し、この場合、数十万株を保有している大株主も、100株しか保有していない株主も同じ優待商品しか受け取れない訳で、どうしても不公平感が付き纏います。まさに、お歳暮やお中元の様なものだと言えるでしょう。

海外の機関投資家などからは、株主への利益還元は、配当や自社株買いで行うべきであり、株主優待制度は不公平だ、といった指摘が常に為されています。

本業とは無関係な株主優待制度を設けている企業側には、株主優待制度を設けて個人株主を増やす事で、株主数を維持する、安定株主を増やすといった思惑があると思われます。

例えば、東証1部上場企業は、株主数が2000人を下回ると2部に指定替えになってしまいます。逆に、2部上場企業で1部に指定替えを目指す場合、2200人以上の株主数が必要です。単元株から貰える優待制度を設ける事で個人株主を増やし、株主数の基準をクリアしようとするのは、よく見られる現象です。

┃株主優待銘柄に投資するリスク

制度の是非はともかく、現実に株主優待を実施している企業が多数存在しますので、そのメリットを享受する為に優待銘柄に投資している個人投資家は沢山いると思います。その際、注意すべきことは、優待銘柄であっても株式投資なのだから、損をしてしまっては意味が無い、という事です。

株主優待で5000円相当の商品・サービスを手にしても、株価の下落で1万円損してしまっては、投資した意味が無い訳です。その優待銘柄を買う代わりに、自分で5000円を出して、株主優待で送られてくる筈の商品・サービスを購入した方が良かった、という事になってしまいます。

また、株主優待は、いきなり内容が改悪されたり、制度自体が廃止される事もあります。株主優待は、配当とは異なり、株主に対する経営陣の責務というよりは、お中元・お歳暮的な性格のものですから、株主優待制度を廃止したり、改悪したりしても、経営陣の責任が問われる事はありません。

よく、「優待利回り」という表現が使われ、株主優待の商品・サービスを金額に換算して、100株投資した時の投資金額に対するリターンが何%だ、という説明が為される事がありますが、株主優待制度の廃止・改悪の可能性を考えると、優待利回りの継続性には疑問符が付くようなケースもあるという事は、強く認識しておくべきでしょう。

ですので、あくまで、PER、PBR、配当利回りといった株価の割安度を表す指標や、利益率、成長率といった企業の実力を表す指標に着目する、通常の株式投資をする際と同様のスタンスで、優待銘柄もチェックすべきです。株主優待はおまけだ、といった程度の認識でいた方が良いでしょう。仮に株主優待が付いていなくても、その銘柄に投資したいと思えるか否かがポイントです。

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