豪州における洪水の経済成長への悪影響は限定的に止まろう

 豪州では、主にクイーンズランド州において、洪水の被害が拡大した。日本のマスコミは、今年1月の洪水(1月13 日頃まで)を多く報じているが、既に昨年11 月から、広い地域(クイーンズランド州に加え、ニューサウスウェールズ州、ビクトリア州など)で降水量が増加していた(※1)。

 クイーンズランド州(※2)では、炭鉱の約7割が水没したとの報道もあり、小麦など農作物への悪影響(ちょうど収穫期にあった冬小麦は、降雨量が多過ぎるとたんぱく質の含有量が低下する)も懸念されている。また道路や鉄道が寸断された地域が広がり、洪水の被害を直接受けなかった鉱山や農場・牧場でも、鉱物や農畜産物の輸送に支障が生じるところが多いようだ。また、一般の産業でも、種々の悪影響が免れ得ないだろう。

 豪州経済に与える影響としては、被害額の試算として50~130 億豪ドル(130 億豪ドルは豪州GDPの約1%に相当)といったものが報じられている。スワン財務相は、28日にブリスベーン(クイーンズランド州の州都)で予定されている演説で、経済に与える影響額の最初の試算値を述べると語っているので、注目したい。

 なお、洪水の影響は、もちろん総じて豪州経済にマイナスであり、2010 年10~12月期と2011 年1~3月期の経済成長率は、大きく押し下げられている可能性が高い。しかし次に述べるような点から、豪州経済が押し下げられるばかりとも言い難く、洪水の悪影響は限定的で、中長期的には豪州経済の成長が持続するものと見込まれる。実際に豪ドル相場が対主要通貨で底固く推移しているのは、そうした明るい点を織り込んでいると推察される。

①豪州経済における輸出の成長寄与度はそれほど高くない

 豪州は資源国であり、農畜産物(小麦、牛肉など)や鉱物(原料炭、鉄鉱石、銅鉱石、金鉱石、ウランなど)の輸出に全面的に依存した経済である、というイメージが強い。しかし前期比ベースでみた実質経済成長率への寄与度をみると(図)、長期的に内需の寄与度が高い傾向が強く、イメージほど輸出に成長を依存した経済ではないことがわかる。

豪州の内外需の成長寄与度

 輸出依存度(財の輸出額÷GDP、2008 年)(※3)を国際比較しても、豪州の輸出依存度は18.8%と、隣国ニュージーランド(23.9%)や、BRICsの中で輸出依存度が高い中国(33.0%)、ロシア(27.9%)、ならびにアジア新興主要国であるインドネシア(28.9%)、タイ(63.2%)、フィリピン(29.0%)、マレーシア(94.1%)に比べて低い。むしろBRICs内で内需主導のインド(14.4%)とブラジル(12.6%)、先進国の日本(16.1%)、ユーロ圏(17.3%、ユーロ域内輸出を除く)に近い。

 もちろん、今回の洪水は、国内での経済活動にも大きな打撃を与えてはいる(工業生産・輸送活動の混乱や、被害を受けた家計の消費カット、農産品価格の上昇による家計への打撃など)。だが、諸報道で伝えられる農産品や鉱物の輸出減少といった事実と資源輸出主導の経済という誤ったイメージから、そのまま想像される経済全体への悪影響に比べ、現実の経済の下押し効果は限られる可能性がある。

②輸出金額の減少は、輸出数量の減少ほど大きくはならない

 豪州からの輸出額は、前年比でみた振れが大きい傾向がある。近年でも、2008 年10 月の輸出額が前年比で60.4%も増加したかと思えば、翌2009 年10 月には29.6%も減少している。これは、輸出の増減が海外からの需要の増減で引き起こされる場合、海外需要が増加すると輸出数量と輸出価格の両方が伸びるからである(需要減の場合はその逆)。特に資源輸出の場合は、価格の動きが大きく、結果として輸出金額の振れも大きくなる。

 今回の洪水による資源輸出の数量減の場合は、需要の減少によって引き起こされたものではなく、供給の減少によるもので、そのため資源価格の上昇が生じている。したがって、豪州からの輸出数量の減少を価格の上昇がある程度相殺する(それでも輸出金額減は免れないであろうが)と見込まれる。

③先行き復興需要の拡大が予想される

 被害を受けた家屋や生産設備、交通インフラなどを復興する必要がある。復興額がどの程度になるかもまだ不透明であるが、被害額とほぼ同額になるとの見方が多いようだ。最も大きい試算額は、1月18 日付のレポートでオーストラリア・ニュージーランド銀行が発表した「最大200 億豪ドル」であろう。

 したがって、昨年終わりごろから今年1月にかけての経済活動が押し下げられた後、ほぼ同額先行きの経済活動が押し上げられる展開が見込まれる。こうした事態を踏まえると、豪州準備銀行も、当面の経済情勢が明らかになるまで利上げを控えるだろうが、復興需要が景気に与える押し上げ効果を踏まえながら、いずれ利上げを再開するものと予想される。

(※1) 鉱山会社大手のBHPビリトンは、2010 年10~12 月のクイーンズランド州での石炭生産が、既に前期比3割減少していた、と発表している(2011/1/20)。
(※2) 1月23 日にスワン財務相が週間経済報告(Treasurer’s Economic Note)で述べたところによれば、クイーンズランド州はGDPで全豪の19%、原料炭生産では80%を占める。
(※3) 総務省統計局「世界の統計」2010 年版による。

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