週間相場展望(2010.09.06~) 静かに忍び寄る「第2のギリシャ問題」

 9月第1週(8月30日~9月3日)の国内株式相場は年初来安値をつけた後、悲観的ムードが広がる中、米株高を受けてジリ高基調に転換した週であった。

 週初の30日(月曜日)は、その前の週のバーナンキ米FRB(連邦準備制度理事会)議長が米経済についての講演で、必要に応じて金融緩和策等で動く用意があると発言した他、米4~6月期GDP改定値が事前予想通り下方修正されたものの、市場予想を上回ったことで投資家のリスク回避姿勢が後退。さらに、この日に日銀が臨時の金融政策決定会合を開催し、追加金融緩和策が発表されるとの観測が広がったことで投資家心理が改善するとともに、外国為替市場において円売りが加速したことで日経平均株価は上昇して始まった。

 その翌日の31日(火曜日)は、前日のNYダウが利益確定売りで反落したことに加え、国内では前日に日銀が追加金融緩和策を発表したが、事前予想の範囲内であったことで失望感が広がった。そして、外国為替市場では再度、円高が進行したことで投資家心理が後退、株価指数先物にヘッジファンドやCTA(商品投資顧問業者)などの短期筋が売りを仕掛けたことで日経平均株価は急落し、終値ベースで年初来安値を更新した。

 一方、名実ともに9月相場入りとなった1日(水曜日)は、前日のNYダウは景気見通しを巡る強弱感の対立や、週末の雇用統計を見たいといった雰囲気が広がったことで4ドル高と方向感に欠ける中、小動きにとどまった。日経平均株価は、米景気や国内政局への不透明感などから、ザラ場中に一時、年初来安値を更新したが、前場中頃に発表された中国8月のPMI(製造業購買担当者景気指数)が51.7と、4ヶ月ぶりに上昇した他、円売り介入警戒感から円高が後退。さらに、民主党の代表選に当たり小沢前幹事長が政見を発表。最近の急激な円高への対応として、「経済危機対応、地域活性化予備費」と国庫債務負担行為を合わせた2兆円程度を直ちに執行して景気対策を実施するとともに、市場介入を含むあらゆる方策を実施すると発言。これを受けて、外国為替市場で円相場が対ドル、クロス円で値を下げると株式市場にも買い安心感が台頭、終日堅調な展開となった。

 2日(木曜日)は海外市場では前日の中国8月のPMIや豪4~6月期のGDP成長率が前期比プラス1.2%増と3年ぶりの高い伸びになったこと、そして米8月ISM製造業景気指数が56.3と4ヶ月ぶりに改善したことなどを好感、NYダウは254ドル高と急伸した。米国の良好な経済指標を受けて国内では買い戻し先行でスタートしたものの、米景気への不安感が再燃したことで円相場が対ドルで一時、1ドル=84円割れ直前まで急伸したことで上げ幅を縮小。しかしながら、民主党代表選の討論会で菅首相が前日の小沢前幹事長に対抗して為替介入等を表明するのではないかといったことが意識され円買いが弱まると日経平均株価は徐々に買い戻され、2営業日ぶりに9,000円台を回復した。

 週末3日(金曜日)は、米国市場では新規失業保険申請件数が減少した他、ICSCチェーンストア既存店売上高がプラスになったこと、さらにNAR(全米リアルター協会)中古住宅販売仮契約指数などが軒並み市場予想を上回って好転するなど、雇用統計への警戒感の中、NYダウは50ドル高と続伸した。さらに、国内では寄り付き前に4~6月期法人企業統計が発表され、設備投資が前期比で9期ぶりに増加するなど、日米の経済指標を好感、これを受けて国内株式市場では朝方より堅調にスタートした。しかしながら、本日の米8月雇用統計の発表を控えて慎重な投資スタンスが広がったことに加え、米雇用統計が悪化した場合、FRBによる追加金融緩和策が打ち出され、結果的に円高が進行するといった懸念から慎重なスタンスが広がった。しかし、民主党代表選の結果、小沢政権となれば公明党との連立模索の動きが予想され、衆参のねじれが解消すれば政策運営も進みやすくなるとの観測もあり、大きく売り込むような動きも見られなかった。

 先週の国内株式市場は週半ばから週末にかけて3連騰して引けたが、外部環境としては米景気見通しに対する強弱感の対立の下、米経済指標の動きや為替相場に左右された一方、国内要因では民主党代表選を巡る政策の行方などを材料視しながら、週末に発表される米雇用統計を意識するといった神経質な展開となった。

 先週の日経平均株価は、その前の週に比べて123.07円(1.4%)高となり、4週ぶりに反発した。平均売買高は15億5,037万株と同0.7%増、平均売買代金は1兆1,162億円と同4.5%増とやや拡大した。なお、新興市場は週間でジャスダックが3.55円(0.3%)高、マザーズが3.70ポイント(1.0%)高、ヘラクレスが5.10ポイント(0.9%)高といずれも小幅反発している。主力株を中心に幅広く押し目買いが入ったものの、売買のボリュームは盛り上がらず、様子見気分の強い中、上値の重い展開が続いた。

 また、物色の方向性としては円高を嫌気する格好で内需ディフェンシブ系の銘柄が比較的値を保ったものの、電機、輸送機、精密といった輸出関連銘柄、及び非鉄金属、鉄鋼、海運、銀行といった景気の動向に敏感な銘柄がジリ貧になるなど、主力銘柄が全体的に軟調であった。

 中国市場に目を向けると、前週末の米国株式市場の上昇を受け、本土市場も香港市場も上昇して取引を開始した。香港市場に至っては7営業日ぶりに反発からの開始ということで継続的な上昇が期待されたが、その日の夜に米国市場が大幅下落となったことで、翌日には週初の上昇分を相殺してしまった。世界的な景気減速懸念からその後はもみ合いの展開となり、本土市場は週間ベースではほぼ変わらずとなった。一方、香港市場は20,500ポイント割れ目前で反転上昇の形となった。

 これまで、一部の報道において中国の自動車産業が供給過剰により減速していくという見方が示される中、私は現地の自動車ディーラーへの取材情報を基に、懐疑的な見方を各媒体で主張していたが、中国汽車技術研究中心が発表した8 月の国内乗用車販売(登録台数ベース)をみると、前年比+59%の97.7 万台と、非常に強い数字となっている。前月の+15%からみると大幅な伸びである。現地情報の重要性を再認識した1件であった。

 さて、今週の見通しであるが、月曜日は前週末に発表された米雇用統計の結果を受けた流れを引き継いでスタートしそうだが、月曜日の米国市場がレーバーデーで3連休となるため、手掛かり材料難の中、週初は様子見気分の強い展開となるであろう。さらに、今週は米国では特に重要度の高い経済統計・景気指標の発表が少ないこともあり(新規失業保険申請件数、卸売売上高・在庫、貿易収支ぐらい)、前週に引き続き米景気の行方などを模索しながら方向感を見極める展開が予想される。アジアでいえば10 日に中国の貿易統計が発表される。輸出の伸びが前月の38.1%から34.5%へ鈍化すると予想されているものの、依然として高い伸びが続くというコンセンサスだ。一方で輸入は前月の22.7%から伸び率が加速し27.0%になると予想されている。結果的に貿易収支は前月より縮小するわけだが、中国の貿易収支の縮小傾向は今後も継続しそうだ。

 一方、国内市場では民主党の代表選における菅、小沢両陣営の政策対応に関心が集まると思われ、折に触れて関連銘柄が物色される場面もあるだろう。さらに、今週は月~火にかけて日銀の金融政策決定会合が開催されるが、前週発表された追加金融緩和策が失望を誘ったこともあり、第二弾の追加金融緩和策が打ち出されるのかどうかに最大の注目が集まっている。サプライズ的な追加策が打ち出され、為替市場での円高の流れが反転するようなことがあれば株式市場も大きな転換点を迎える可能性は高い。なお、8日(水曜日)の7月機械受注統計や9日(木曜日)の7~9月の法人企業景気予測調査、8月工作機械受注などで製造業の現状及び先行きを占うことになりそうだ。さらに、週末には先物・オプションのSQ(特別清算指数)算出日(=メジャーSQ)を迎えるため、手掛かり材料に乏しく、薄商いの状態が続けば指数先物などに仕掛け的な売買が入り、一時的に乱高下の激しい展開になることも予想される。

 あまり話題にはあがっていないが、世界的に国債の利回りが低下しているなか、ギリシャやアイルランドの国債の利回りが上昇しており、ドイツ国債とのスプレッドが拡大している。アイルランド国債のスプレッドに至ってはギリシャ問題が表面化した5月のころより拡大している。市場が正しいという前提に基づけば、既に市場は「第2のギリシャ問題」を織り込み始めているのかもしれない。

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