経済学200年、投資家100年の株戦記
~ 学問が株式市場を解明できない理由 ~
~ 100年に1度の危機に至るまで ~
資本主義経済のことを私たちはどのくらい理解しているでしょうか。資本主義経済と経済学の間には切っても切れない関係があります。資本主義経済についての研究こそが経済学であり、経済学からファイナンス理論へと発展を遂げてきました。そもそも、資本主義経済以前というのは、自給自足と物々交換の経済です。
資本主義経済の始まりはおおむね18世紀後半からイギリスでさまざまな産業機械が発明され始めたころ、とみられています。1730年ごろから紡績機が相次いで発明され、1769年には、ワットが蒸気機関を大幅に改良しました。1814年にはスティーブンソンが蒸気機関車を発明しています。
米国では1807年にフルトンが蒸気船を発明したことで水上での物流が飛躍的に進歩を遂げます。効率的なインフラ整備が可能になったことで、発展が加速するきっかけになりました。
この時代を総称して、イギリスで起きた「産業革命」と呼びますが、18世紀後半から19世紀にかけては「産業資本主義経済」として現在の資本主義の基礎となりました。同時期の1776年に出版された「国富論」で、アダム・スミスが唱えた「見えざる手」という有名な言葉は、誰もが一度は耳にしたことがあるはずです。
アダム・スミスは経済・市場は国の保護統制政策ではなく、自由に放任しておくことがもっともよい結果を生む(レッセ・フェール)ということを掲げ、これが「見えざる手」のひとことに凝縮しました。
ついでなので株式会社についても少し触れておきましょう。世界で初めての株式会社は東インドとの貿易を行うために1602年3月に設立されたオランダ東インド会社です。株式会社の起源は、大航海時代に難破リスクのある航海の度に「座」を開いて出資を募った「当座会社」にあり、株式投資の起源は大航海時代と言われています。
その後イギリスで発展した産業革命は「産業資本主義」と発展し、巻き返しを図ろうとした独、米国が大企業による大量生産によって、一気に勝者となるための「独占資本主義」に走りました。より安い価格で大量の商品を提供するために先進各国は植民地政策を推し進めていくことになりました。
先進各国はこぞって植民地を広げ、植民地争いはついに、第一次世界大戦という悲劇に発展します。その後も、アダム・スミスが唱えた古典的な経済学に続いて、ジャン=バティスト・セイは1803年に出版した「政治経済学概論」のなかで、供給が過剰になったとしても価格が下がることで需要は必ず生まれるという「セイの法則」を打ち立てます。
その考え方を引き継ぐイギリスの経済学者ジョン・スチュアート・ミルやデヴィッド・リカードなどによって、セイの法則は発展し、「過剰な大量生産の時代」が繰り広げられました。
そしてついにクラッシュを迎えます。1929年~33年の資本主義諸国を襲った史上最大規模の世界大恐慌で、古典的な経済学が行き詰まったのです。大量生産によって過剰供給される物資は需要をはるかに上回り、価格が下がっても需要が生まれることはありませんでした。そこに登場するのがジョン・メイナード・ケインズです。
ケインズは「供給は需要を作る」という「セイの法則」を否定し、1936年に発表した著書「雇用・利子および貨幣の一般理論」のなかで、不況時には政府・国による公共投資が有効需要を生み出し、国内総生産(GDP)を拡大させるというケインズ経済学を確立。この有効需要理論はケインズ革命とも呼ばれ、ここから現在に至るまで、経済学では古典派とケインズ派との対立が続くことになります。
大恐慌時には株価の暴落をはじめ、相次ぐ企業倒産と失業者の急増などで、資本市場もクラッシュの状態でした。米国のフーバー大統領は恐慌当初、アダム・スミスのレッセ・フェール(自由放任主義)政策を取ったため、事態をさらに悪化させてしまいました。1932年後半から1933年春にかけては世界大恐慌がピークに達し、時の米国ルーズベルト大統領は1933年3月、ケインズの理論を実践して大規模な公共事業で景気を刺激しようとニューディール政策を開始しました。
ところが、当時は結果的にそれほど有効な対策にはならなかったというのが事実のようです。資本主義経済の各国は、投資資金を回収し、自分の国を守ることで精一杯というような時代。そして、1939年から世界の主要各国が2つに分かれて始まった人類史上で最悪の第二次世界大戦勃発へとつながっていきました。
資本主義経済に翻弄され、2度の世界大戦を経て、景気循環を乗り越えながら戦後の日本は成長を見事に続けてきました。そして、バブル崩壊とともにケインズ経済学にもほころびが生じ、再び古典派の経済学が注目されたりしています。米国でも双子の赤字を抱え、先進各国の財政悪化問題は現在でも、最大の課題となっているのです。ケインズ経済学に対する疑問符が投げかけられるのは、資本主義先進各国の財政赤字に目が向けられるからです。資本主義経済は、まだ、そのひとつのあり方を試行しているに過ぎません。
次回は「資本主義は宗教(哲学)から生まれた」をお届けします。








