金融工学1:ウォール街で最も著名な日本人

一般に、誇り高き数学者たちは、自分の研究が応用されることに対してほとんど無関心なのです。数学者にしか見えない「数学的実在の世界」という代物があるらしく、その世界の法則を探求するのが数学者の務めだ、と彼らは考えているそうです。言い換えれば、偉い数学者であればあるほど、私たち凡人が暮らす俗世間には何の関心も抱かないようです。ともあれ実に皮肉なことに、「金融のことなどまったく知らないし、関心もない」伊藤清先生が、意図せずして、ウォール街のディーラーやアナリストにとって「神様」のように崇められる存在になったのです。

「伊藤の公式」の応用に端を発する金融工学ないし数理ファイナンスは、今や最も人気のある経済学の研究分野の一つとなりました。米国が発祥の地なのですが、多くの中国人の留学生が米国で金融工学を学んでいます。
1998年、北京大学創立100周年記念行事に招待された際、北京大学に金融工学研究センターが設置されているのを知り、私は驚きました。なぜなら、日本に初の金融工学の講座(または研究部門)が東京大学と東京工業大学に設けられたのが翌99年、京都大学経済研究所に金融工学研究センターが設置されたのは 2000年だったからです。この分野の教育・研究において、日本は米国や中国のはるか後塵を拝しているのが偽らざる実情なのです。

【師範】佐和隆光 京都大学経済研究所特任教授・滋賀大学学長:
東京大学経済学部卒。東京大学や京都大学の研究所の助手を務め、スタンフォード大学研究員、イリノイ大学客員教授を経て、80年より京都大学経済研究所教授。帰国後は再び東京大学や京都大学の教授を歴任。1995年より2005年まで環境経済・政策学会会長。2007年11月にそれまでの功績が称えられ、紫綬褒章を受賞した。

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金融工学2:ポートフォリオ理論

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