分散投資のメリット
「貯蓄」から「投資」の流れをうけ、投資信託(投信)の人気は一向に衰える気配がありません。投信はいまや、個人の資産運用の中核的な金融商品となった感があります。
ただ、その運用方法について個人投資家の方々に尋ねてみますと、多くの方が日本株式投信、中国株式投信、世界債券投信などといった個別の投信選びがいちばん肝心なことだと思っています。もちろん、投信の運用成績は玉石混交ですから、良い商品を慎重に選ぶ必要はあります。しかし、個別の投信を選ぶこと以上に重要なのは、どの種類の投信にどのくらいの割合で資産を割り振るか、という点です。資産運用の世界では、「個別の金融商品の選定が投資パフォーマンスの良し悪しに与える影響は20%、残りの80%は資産配分で決まる」といわれています。つまり、それほど資産配分を考えることは大切なことなのです。
ある資産の魅力が薄れれば、かならず別の資産の魅力が高まるもの。相場の循環はそのようにできています。従って、投資家の皆さんがやっておくべきことは、どのような相場状況になってもお互いがお互いをカバーし合える資産クラスをポートフォリオのなかに抱えて分散を図ることです。
単一の資産に投資をしていると、その資産が上昇したときは大きく儲けることができますが、ひとたびマイナスの方向にいくと、大きな損失を被ります。
実際に、2007年8月のサブプライムローンの破綻に端を発した「世界同時株安」のとき、国内外の株式型投信や不動産投信は大幅な下落に見舞われましたが、債券型投信はプラスの値を保ちました。つまり株式型投信と債券型投信を組み合わせて分散投資をしていれば、大きな損失は免れたのです。
私たちはどうしても、いま注目の投資先だと聞くと、「この好調はしばらくつづくだろう」と期待してしまいがちです。そして、たいてい特定の資産、特定の地域に自分の運用資産を集中させ、相場の上げ下げを予測して投資を行ないます。
ところが、どのような資産であっても、長期にわたって一本調子でリターンが上がっていくことはまずありません。私たち個人投資家が動き出すころにはたいてい相場が冷え込む地合いが整っており、高値づかみをさせられて悪い結果に終わることが少なくないのです。
個人投資家の資産運用では、「大きく儲けることではなく、大きな損をしないようにすること」をまっさきに考えることが必要です。日々の値動きにとらわれずじっくり時間をかけてお金を殖やしていくことが実は何よりも確かな資産運用の方法です。
そして、そのために有効なのが分散投資なのです。
【師範】朝倉智也 モーニングスター株式会社 代表取締役COO:
慶應義塾大学文学部卒。米国イリノイ大学経営学修士号取得(MBA)。北海道拓殖銀行、メリルリンチ証券会社、ソフトバンクを経て、モーニングスター株式会社設立に参画、現職に。日々の業務に加え、資産運用にかかわるセミナー講師を多数務め、投資信託に関する著作も出版。個人投資家への投資教育、啓蒙活動を行う。









